前回の話までで、日本の天皇のオリジナリティがおおよそ学べました。次に天皇に焦点が当たるのは幕末の動乱(孝明天皇)です。小中学校の教科書では明治天皇になります。
幕府の時代では歴史の表舞台は武将たちになります。歴史授業の教材としては朝廷も天皇も消えてしまいます。
それで普通の教室では子供たちも忘れます。
明治になって「あ。天皇ってまだいたんですね」となります。
たしかに戦国時代の一時期はかつての皇室の土地も失われてしまい大嘗祭を行えない天皇もいました。それでも天皇が続いたのはそれが武将たちにとっての「権威」であり続けたからでした。
「日本が好きになる!歴史授業」でも、幕府の時代にはカリキュラム上は天皇は登場しません。「南北朝時代(後醍醐天皇)」は1時間の授業にしていますが、これだけが例外です。
戦後の歴史教育では後醍醐天皇や楠木正成は教えないのが通例となっています。これはGHQの指令(黒塗り教科書)が始まりですが、戦後の日本人も「それがよい」と受け入れてきたという歴史があります。
(注)南北朝の授業については、明治末の「正閏論事件」といっしょにまたいつか取り上げてみたいと思っています。これは「権威」と「権力」が一体にもどったかたちで「天皇親政」とよばれました。
それで鎌倉・室町・江戸の幕府の時代も子供たちが天皇の継続を覚えていられるようにするために、以下のような単純な指導を考えました。
教科書には、幕府の始まりに当たって必ずこういう組織図が出てきます。
室町幕府も江戸幕府も教科書の「幕府のしくみ」図のトップは「将軍」です。この「将軍」とは「征夷大将軍」のことです。
こんなやりとりをするだけです。
教師 「武将が『将軍』になるのは自分で勝手に名乗るのですか?それとも誰かに任命してもらうのですか?」
子供達「それは天皇に任命されるんじゃないですか?頼朝の時そうでした」
「日本が好きになる!歴史授業」を学ぶ子供たちはこれがわかっています。
そこで教科書の組織図に「天皇」と「任命する」を書き足すようにします。子供たちのノートもそうなります。
ぼくと考え方が同じところが多い学習サイトから素晴らしい図をお借りしました。下図です。
この学習サイトは「日本まほろば社会科研究室」です。とてもわかりやすいので勉強になります!ぜひ訪問してみてください。
こういう指導を室町・江戸と3回やります。京都に朝廷があり天皇はずっと続いていて、並みいる武将たちから日本の君主としての権威を認められていたことが子供たちに伝わります。
武力をもって実力で幕府を開くのですが、権力のトップがこういう形式を踏んできたことを教えることはとても重要です。日本は喧嘩や戦争が強いだけじゃトップになれない国なのです。天皇陛下の後ろ盾を得てはじめて政府(国家権力)が成り立ちます。
この国の形のことを国体(こくたい)と言いました。それは現在も変わっていません。
これを折に触れて子供達に教えるようにしてきました。
もう一度すばらしい図をお借りします。
日本はいい国だと思います。
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