文明国日本の完成



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文明国日本の完成
●指導要領には天武天皇が出てこないので、聖武天皇を1時間で取り上げるのだが、大仏の話だけで終わってしまうのを残念に思っていました。天平時代は、まさに聖徳太子の大方針がかなりの実質をもって完成した時代だといってよいからです。箇条書き的な説明主体の授業ですが、古代国家が完成した喜びを児童と共有することを主たるねらいとしています。そして、そのクライマックスに大仏をおいてみました。この発問のアイディアは、むかし大宮教育サークルの中島優氏から教えていただきました。おそくなりましたが御礼申し上げます。

1 中国と対等な文明国の条件

『唐は巨大な帝国です。日本は小さな島国です。しかも、追いかける立場です。だから、まったく同じ実力を持つことは考えられません。しかし、これだけの条件がそろえば、「文明国」としては中国に追いついたと言える条件がいくつかありました。聖徳太子の設計図をバトンリレーしていった天皇やリーダーたちは、けんめいに努力してこの条件をクリアしていきました』

2 聖徳太子の大方針を受け継いだ人々

『天智天皇・天武天皇・持統天皇・聖武天皇という4人の天皇のバトンリレーで、日本の国造りはすすみ、奈良時代の聖武天皇の時代になって、日本は名実ともに中国と対等な文明国として完成したと言っていいと思います』

『聖徳太子の大方針の③「隋と対等な独立国日本」を実現するための第一歩は、「天皇」という称号を認めさせることでした。が、国の力の内容がそれで対等になったわけではありません。これら4人の天皇は「実力でも、中国に追いつく」ために必要な政治を進めたのです』

みなさんは、中国がただ一つの文明国である世界において、中国と対等な独立国日本(中国の属国ではない)ができあがるためには、何がなければならないと思いますか。当時の国際社会の中で文明国の条件とは何か?を考えてみましょう。作らなければならない物、決めなければならない事など、思いつくものを5つ書いてみましょう。

■発表させ、できるだけ「ありうる」という主旨で評価する。

【解説】この発問は、難しいと言えば難しいが、子どもなりの発想でけっこうおもしろい発言がある。法律を作るとか、軍隊を持つなども出てくる。あるいは、奈良時代までの日本がやったことを調べてみようと、資料集などから列挙させるのもいいと思う。

3 聖徳太子と4人の天皇が実現したもの

●以下のことを資料を示しながら説明していく。

①中国の皇帝と対等な君主=「天皇」・607年の聖徳太子の国書
 「東の天皇、つつしいて、西の皇帝にもうす」

②国をまとめる統一政府がある。・・・・・・645年 大化の改新

③国の政治のもとになる法律がある・・・・・ 701年 『大宝律令』

④税が中央政府に集まる・・・・・・・・・・口分田、租庸調の税制、五畿七道

⑤国を守る軍隊がある・・・・・・・・・・・防人

⑥国の中心にりっぱな首都がある・・・・・・藤原京 → 710年 平城京(奈良の都)

⑦祖国の歴史が本になっている・・・・・・・712年『古事記』720年『日本書紀』

⑧文化の面でも世界レベルになる・・・・・・その代表としての奈良の大仏を次に取り上げる。

4 奈良の大仏  

聖武天皇(701~756)
行基(668~ 749)

●全国に国分寺を建て、その中心として東大寺を建立、世界一の鋳造物を作ったことを説明する。
●大仏建立の詔を読む。


大仏建立の詔(聖武天皇) 「続日本紀」より

天平十五年(七四三年)十月十五日に、大きな願いをたてて大仏の金銅像を造ることにした。
国民を救い、仏の教えによって、わが日本の力をいっそう高めるためである。
国じゅうの銅を使いつくしても、この像をつくるのだ。
そして、大きな山から木を切り出して大仏殿を建てる。
広く世界の人々と共に仏教を信じ、ともに仏さまのご恩にあずかり、人としての正しい生き方をもとめたいと思う。
いま、天下の富と力をあわせ持つのは私である。
だから、この富と力とをもってすれば、私一人でこのとうとい大仏をつくることは、けっして困難ではない。
しかし、それでは、私の真の願いにそわないものとなってしまうだろう。
かえって、人々をただつらいだけの労働に追い立てるだけになってしまい、仏さまのありがたさを感じることができないばかりか、おたがいに悪口を言い合って罪人を生みだすようなことにならないともかぎらない。
(だからこそ、この大仏は全国民の力を集めて作りたいのだ)
もし、一枝の草や、一握りの土でも、たくさんの国民が自分から持ちよって、大仏作りに協力してくれることがいちばん仏の道にかなうものである。そうであってほしい。
国や地方の役人は、この大仏づくりの事業を口実にして、国民の生活をみだし、無理な税を取り立ててはならない。
以上のことを全国に知らせて、このような私の真心を伝えるようにしなさい。


 

何人の人がこの天皇の呼びかけに答えて、銅などの寄付を出したでしょうか?
当時の総人口は600万人、そのうち貴族が1000人いました。

銅や金の値打ちの高さを話し、次のA~Cから選ばせる。

A:1000人以下、  B:1000人くらい  C:1000人以上

実際は、37万2075人の人々が寄付したことを教える。貴族だけでなく、非常に多くの国民が国民がこの大事業を支持し、応援したことを話す。

ここで、私は大仏の作り方を説明したアニメーションを見せている。なければ、図で表すなど出来るといい。

①原型づくり
  木で骨組みを作り,その上に粘土を厚く塗る。鋳型のもとになる像を作る。
②型どり
  原型の像に更に粘土を塗り,型を取り,切ってはずして焼く。
③すき間づくり
  型どりで切り取って焼いた粘土の型を土で覆いながら下から順に組み立てる。
  このとき,原型の像を削ってすき間をつくる。
④流し込み
  現場で熱し,溶かした銅をすき間に流し込む。
⑤鋳造
  8段に分け,下から1段ずつ鋳造していく。最後は大仏は土の山に埋まってしまう。
⑥取り外し・仕上げ
  土と外側の粘土を取り払い,不完全なところをたし,最後に前進に水銀を使って,
  金ぱくをする。戻る

●最後に、大仏開眼供養の様子や、当時の国際社会に強い衝撃を与えた聖武天皇の思いについて話して授業を終える。

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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

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