中学2年「日露戦争」の授業 2



日本史ランキング
クリックお願いします!別ウィンドウが開きます

2 ポーツマス条約

■伊藤博文は、開戦前に金子堅太郎をアメリカに派遣した。セオドア・ルーズベルト大統領に講和の仲介を依頼するためだ。金子とルーズベルトはハーバード大学の同窓生だった。
セオドア・ルーズベルト

・ルーズベルトは、日本海海戦の決定的な結果をとらえて、講和の仲介をした。伊藤の計画通りとは言え、日本の国力にとってはまことにありがたい仲介で、ロシアも講和会議を了承した。講和会議はアメリカ東海岸の港町ポーツマスで開かれた。

・日本の全権は小村寿太郎、ロシアはウイッテだった。
小村寿太郎

・小村は日本の苦境はおくびにも出さずに、ロシアにとってはまことに手強い交渉を展開し、講和条約が結ばれた。

1905年(明治38年) 9月   ポーツマス条約

***********************************
ポーツマス条約のおもな内容

1 朝鮮半島を日本に任せる(ロシアは手を引く)。
2 ロシアは満州から出て行く。
3 日本は領土(「臥薪嘗胆」の遼東半島と南樺太)を得た。
4 南満州鉄道と付属鉱山の利権を得た。

*************************************

■みごとな交渉結果だったが、国民は怒りました。なぜでしょうか?
*賠償金が得られなかったから。

・政府は戦争の継続を絶対に避けなければならなかったので、はじめから賠償金は得られまいと考えていた。
国民は、日清戦争の膨大な賠償金を覚えていて、こんな大勝利をしたのにおかしいと思った。生活苦もあった。
・日比谷焼き討ち事件が起きた。

3 日露戦争の意味を考える。

■アジアの新興国日本が、英国との対等な条約を結んだかと思ったら、こんどは超大国ロシアに勝利した。
東後平八郎連合艦隊総司令官は、日本海海戦にあたって将兵に次のように鼓舞した。

「皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ」(全員で大きな声で音読した)

・この戦争は皇国日本にとって、まさに生きるか死ぬかの決戦でした。リーダーたちも、日本国民も、みなそれをわかって戦ったのです。私たちの日本がいまあるのもこの勝利のおかげです。

・この戦争には3つの大きな意味がありました。これからの勉強のためにもしっかり覚えておきましょう。

1 日本の平和と安全が確保され、ロシアに勝った日本は世界の一等国として認められた。明治維新以来の国家目標「西洋列強と対等につきあえる国をつくる」という目標が、みごとに達成されたのです。

2 植民地にされていたアジアの諸民族に独立への希望を与えた。
  「同じアジア人の日本にできたのだ。われわれも努力すれば独立できるのではないか」

**************************************

アジア独立運動のリーダーたちの声

■中国革命の父・孫文(そんぶん) 
日露戦争に日本がロシアに勝った。これはアジア民族のヨーロッパ人に対する最初の勝利だった。日本の勝利は,数百年もの間西洋に支配され続けてきた全アジアに影響をおよぼした。それまで西洋に支配されるだけだったアジア民族は、たいへん喜び、そして大きな希望をもった。
 私は、日露開戦の時ヨーロッパにいた。東郷元帥の勝利がヨーロッパ中に伝わると、全ヨーロッパの人々はまるで父母を失ったかのように悲しみ残念がった。日本が勝利したことは、白色人種全体にとって不幸だと思ったのだ。
 しばらくして、私は帰国することになりスエズ運河を通った。アラブの人々は、私が黄色人種であるのを見て、たいへん喜んだ。 そしてく言った。
「これまで、われわれアジアの有色人種は、西洋の白色人種の圧迫(あっぱく)を受け、苦しみ続けた。だが、このたび日本がロシアに勝ったということは、東洋民族が西洋民族にうち勝ったことになる。日本人は戦争に勝った。同じようにわれわれも勝たなければならない。だからわれわれは喜んでいるのだ。」
 日本がロシアに勝った結果、アジア民族が西洋人の支配から独立するという大きな希望を手に入れたのである。

■インド独立の父・ネルー
 日本が、最も強い西洋の国に勝てたというなら、どうしてインドにそれができないことがあろうか。長い間、インドはイギリスに対する劣等感(れっとうかん)にとらわれていた。そして思った。これからもずっと、ヨーロッパ人に支配され、それをがまんしなくてはならないのだと。
 日本の勝利は、アジアの人々にとって偉大な救いとなったのである。

■ビルマ(現ミャンマー)バー・モウ元首相
「この日本の勝利がアジア人に与えた影響は消えていない。これはすべての支配されてきたアジアの人々に、新しい夢を与える歴史的な夜明けだった。

■インドネシア
「日本に向かうバルチック艦隊を見たら、もうこれで日本はおしまいだと思った。ところがこのバルチック艦隊を日本が全滅させたと聞いて、アジアを白人の支配から救ってくれるのは日本人だと感じた」 

■アジアではないが、ロシアにいじめられていたフィンランド
 「ある日友人が私の部屋に飛び込んできた。そえいて、日本がロシアの艦隊を撃滅したというニュースを教えてくれたのだ。彼はその日本海海戦の様子を、身振り手振りで熱狂的に話してくれた」
・ピューニッキ社は後にアドミラルシリーズの一つに、東郷元帥の写真をラベルにした東郷ビールを売り出した。

****************************************

3 西洋に「黄禍論」が起き、やがてアメリカなどで日本人差別が始まる。
 「日露戦争の日本の勝利は、植民地のアジア人に希望を与えた。われわれ西洋人のアジア支配に黄色人種どもの禍いをもたらすだろう。日本に注意しよう!」

■日露戦争は、白人が有色人種を支配して搾取してきた世界史の大きな流れにストップかけた。彼らの奴隷にはならなかったアジア人の国日本がみごとに近代化を成し遂げただけでなく、戦争にも勝てる力を見せたからだ。
しかし、その偉大な成功は、わが国を新しい苦難の運命に導いていく。白人たちによる人種差別の歴史はその後半世紀、いやそれ以上続いたからである。


歴史 ブログランキングへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ
にほんブログ村


  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

コメント

コメントする

目次