*この授業は2時間構成です。以下に示すのはその1時間目です。なお、自由社教科書のカリキュラムでは1時間扱いとなっています。
1 満州について確認する
満州の地図を見る。日本は関東州を租借し、南満州鉄道(長春以南)の経営権などを持つ。それらは、日露戦争、ポーツマス条約によって合法的である。
「関東」の「関」が万里の長城を意味すること、満鉄など。
20万人の日本国民(朝鮮人を含む)が暮らし、関東軍1万5千人がその生命財産と利権を守っている。
満州は軍閥張学良の支配下にあり暴政が続いていたこと、反日運動にも張学良の指示が関わっていたこと、その私兵が26万人いたことを教える。
2 反日運動が満州で激発した
以下の資料でその激しさを教え、居留民の苦しみに共感させる。
・共産主義者による事件(シベリア出兵時を含む)昭和4年までの10年間で108件。
とくに昭和5年間島省で起きた事件を解説。日本領事館・駅・鉄道が放火され、市街戦となり、日本人44人が殺害された。
・関東庁警察が扱った反日事件(鉄道妨害や企業・商店への破壊活動など)。
昭和5年1年間で1249件起きた。
・日本人、朝鮮人居留民への迫害事件。暴行、傷害、放火、デマ宣伝など多数。
・排日教育政策による被害。児童への投石、暴行、唾の吐きかけ、ナイフによる脅迫など。
・万宝山事件(昭和6年5月)長春付近の万宝山で朝鮮人が中国人に襲撃され多数の死者が出た。
・中村震太郎大尉虐殺事件(昭和6年8月)。この事件によって、国民の多くが政府の協調外交に対して「我慢の限界」に達していたことを教える。
3 満州事変起きる
・昭和6年9月、柳条湖事件(鉄道線路爆破)という謀略によって、綿密な計画を立てた関東軍が行動を起こした。「柳条湖事件は張学良軍のしわざ」と宣伝して、自衛のための軍事行動とした。
・中心人物:石原完爾と板垣征四郎の写真を見せて名前を教えました。(脱線ですが、マエストロ小澤征爾の命名について話しました)
4 政府か関東軍か?
・政府はただちに戦いの不拡大を指示し、協調外交を維持しようとした。
・関東軍1万5千人は、張学良軍26万人に勝利して、満州全域に治安を確立した(下剋上ですね)。
発問「みなさんが当時の国民になってみたら、どちらを支持するでしょうか? 政府か関東軍か。」
・意見分布を取ると、なんと学級全員33名(欠席2名)が関東軍を支持しました。前時「反日運動と日本」で、協調外交を支持した生徒も満州事変やむなしと考えていました。
・諸君は当時の国民の大多数と同じ考えです、と史実を教えました。
【生徒の関東軍支持のおもな理由】
「こんなに日本人が傷つけられているのに、政府が国民を守らないのはおかしい」
「中国人が日本人や朝鮮人に違法なことをやってきたのだし、居留民を助けるためだからしょうがない」
「在満日本人がとても厳しい生活をしているのに、国が動いてくれないのはおかしい。やり方には納得いきませんが、これしかなかったのではないかと思い、関東軍支持にしました」
「国民を助けるのは当然だし、政府が助けないのはおかしい」
「違法な被害いい衣を解決できない政府の方針はダメだと思った」
「ずっとやられっぱなしでは、向こうに甘く見られて、最後はもっと残酷なことになったと思う」
「これ以上満州に住んでいる日本人が迫害されれば、国内の大峰大大国民も激怒し、怒りと悲しみが絶えず、日本がばらばらになっつぃまうと思ったから」
「どんなときにも国民の気持ちになって考えるのが一番よいと思ったから」
「日本は今までも困難を乗り越えて勝ってきたから」など。
・政府は、結局関東軍の行動を認め、この軍事行動に予算を付けることにしました。国民世論に従ったかたちでした。
5 満州国建国と犬養首相暗殺事件
・昭和7年3月、関東軍は日本の傀儡国として満州国を建国しました。清朝(満州人の王朝)最後の皇帝溥儀は、関東軍の依頼に応じ、故国満州の皇帝に返り咲きました。
・溥儀の自伝『わが半生』から、「私は感激がこみ上げてきた」のくだり読みました。
・民政党の犬養毅首相(解散総選挙で民意を得た憲政の常道内閣)は陸軍の満州国建国に反対した。満州は中国に領有させ、日本の意志を反映させるという方針で、国民党と交渉した。犬養は辛亥革命の支援者であり国民党と太いパイプがあった。
・同年5月15日、犬養は海軍将校らに拳銃で殺害された(五・一五事件)。「話せばわかる」と最後まで言論による戦いを望んだ護憲運動の闘士のエピソードを教える。
・この後、政党内閣はもどらなかったことを教える。
・やがて日本政府(斎藤実内閣)は、満州国と「日満議定書」を結んで、正式に満州国を承認した。
資料「日満議定書」
・満州国は日本と中国で結ばれた条約を尊重する。
・日本と満州国は共同で国家を防衛し、満州国に日本陸軍を駐留する(いま、日本全国にある米軍基地と煮ていますね)。
:ここまでで、1時間目終了です。
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