縄文時代「日本人と日本の心のはじまり」



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縄文時代の授業
「長い時間をかけて日本人の土台がつくられる」

●この授業では、縄文時代のイメージをつかむ。わが列島の一万数千年の歴史のうち、縄文時代より後はたった二千数百年にすぎない。その気の遠くなるような長い時間のなかで、私たちの遠い祖先は、美しい土器をつくり、美味いものを食い、豊穣な自然や死者に祈り、日本語の基になった言葉でを話したり物語りしたりした。

1 絵でわかる縄文人のくらし
黒板に絵(縄文時代の生活の想像図)をはって授業に入る。
縄文時代の暮らし

『これは縄文時代のくらしの想像図です。テキトウに画いたものじゃないよ。考古学者が大地から掘り出した遺物をもとに考える。それが検討されてほとんどの学者が認めるようになった説がイラストレーターによって描かれる。それをまた学者がチェックする。それを繰り返してようやくOKが出る。これは、そうやって描かれた想像図です』

【解説】絵や写真から始めるとスッと授業に入れるのがいい。アリスのうさぎ穴みたいです。そのうえ、写真や絵なら誰でも何かを見つけられるのがいい。そのオープンな感じが授業の気分を明るくします。

┌──────────────────────────────────────┐
  絵を見て、気づいたことやわかったことを、ノートに箇条書きにしなさい。
└──────────────────────────────────────┘
時間は3分くらい。「5つ書けたら天才!」などと盛り上げます。
時間になったら、なるべく大ぜいに発表させましょう。列で指名したりして。
「狩りにいって、獲物があった」
「土器を作っています」
「家があんがいちゃんとしている」
「家の中で火を燃やしている」
「ドングリを土器に入れてためてある」
「木の実を拾ってる人がいます」
「海で船に乗っている人がいる」
「魚をとったり、貝をとったりしている」
「ゴミ捨て場がある」などなど。
これらを引き取って縄文土器とか、貝塚とか、竪穴式住居などの用語を教え、狩り(漁)と採集で食料を得て、集団で定住生活をしていることを確認します。また、私は、大人、老人、子供、女性と男性がみんなで助け合っていることにつながる発言があったら、必ず評価するようにしています。自然の恵みだけでなく、自然の脅威と共に生きる暮らしをしっかり想像させましょう。

【解説】小さな気づきでもたくさんほめてやりましょう。「おう!よく見つけたねえ」「人物の姿勢から推理しているところがすごいね!」などです。くり返していくと、短時間で集中して図像を読めるようになります。

2 偉大な発明:縄文土器
┌──────────────────────────────────────┐
この絵の中に「人類初の偉大な発明品」とよばれるものがあります。
  それは何でしょう?
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「家」「船」「弓」「土器」などが上がります。
正解は「土器」です。
『船は木を切ってくりぬいたもの。家は木を切って骨組みを作り、屋根に草をかぶせる。
弓矢も自然の物を組み合わせてできています。切ったり削ったり形を変えただけですが、土器はちがいます。粘土で形をつくり熱を加えて焼き上げて固くしたものです。自然にある性質を熱で変化させて作られた道具です。自然の性質を変えた所が、他の道具と決定的にちがいます。』

【解説】ちょっとこじつけっぽいけどウソではないよね。この火の利用がやがて金属の発明につながっていくわけだから。ま、列島人は土器で満足してしまって金属には走らなかったけれど、ここで新石器時代の画期となった土器の発明を位置づけておきましょう。

できれば、ここで縄文土器の実物を見せよう。最近の博物館は昔に比べてずいぶんオープンになり手続きさえ踏めば本物を教室に貸し出してくれるようになった。私は縄文土器、縄文土器片(学習者に触らせる)、石斧、縄文の石臼、矢じり、弥生土器などを借りて、授業で使っている。
そこで、以下のような内容を黒板に書いて説明します。

縄文土器1
縄文土器2

〈土器が人類初の偉大な発明品である理由〉
①自然物の性質を火によって変えた人工的道具の始まり。
②料理の始まり。
 煮る→やわらかい、消化がよい、おいしい
 あくぬき→たくさん食べられる、おいしい    
 煮てから乾かす→干し貝などの保存食料、おいしい
③家の中に水をたくわえられるようになった。
こうして(土器だけがその理由ではないけれど)、人口もふえていき、山内丸山遺跡のような人口数百人の集落(縄文都市)が数世紀にわたって反映するようになったことも、復元写真などを見せながら教える。
そして、大切なことをつけ加える。「日本列島から出土した土器が今のところ世界最古!」だということだ。それは、青森県大平山元 (おおだいやまもと) 遺跡出土の縄文土器で、放射性炭素年代から推定すると 約1万6千年前。もしかすると、私たちの先祖が、人類初の偉大な発明品:土器の発明者だったかもしれないのであ~る。

【解説】だがしかし、この記録は塗り替えられてしまった。2009年に、中国湖南省の洞窟(どうくつ)で世界最古となる約1万8千年前の土器が発見されたからだ。ま、日本列島も含む東アジアが土器の世界最古地帯と言いことだろう。

3 黒曜石の切れ味
 ついでに、石斧や矢じりなどを見せながら、縄文人の知恵に感動させたい。私は、黒曜石のでかいやつ(20cmくらいあった)を担任していた児童からもらって持っていたので、これを割って見せて、できた切片で紙を切って見せたりした。スパッという感じできれいに切れて「うぉー!!」となる。
 また、黒曜石が伊豆七島の神津島や信濃の和田峠など、一定の産地があったことから、縄文人が相当広い交易圏をを持っていたことを話す。山内丸山出土の、矢じりの黒曜石は北海道原産、ヒスイの装飾品は越後産など、丸木船で航海した冒険的な縄文人のイメージもつけ加えておく(これについては地図資料を見せて説明したい)

縄文の交易

4 おしゃれな縄文人
想像図「おしゃれな縄文人」を貼る

おしゃれな縄文人
┌──────────────────────────────────────┐
│ これはいろいろな出土品から見た想像図です。どんなことがわかりますか? │
└──────────────────────────────────────┘
「顔に何か塗っている」
「首飾りや腕輪をしている」
「着物に模様がある」
「おしゃれ」など。
縄文人の生活は簡素だが、入れ墨や化粧をしたり、いろいろな装身具を身につけている。それらには呪力があったと考えられているからだが、それは宗教の始まりでもあり、「美」を感じる感受性の始まりでもある。
ここで、土偶の写真を見せる。

土偶1
土偶2

人形にも呪力があった。土偶は、自然の豊穣を祈る形代だったと考えられている。また、自然に「神」を感じるだけでなく、死者を墓に葬ること(死者への畏れ、祈り))も始まったこと、日本語のもとになる言葉が話され、物語が生まれた(神話・伝説)ことも話しておきたい。
 これらの「こころ」は、おそらく今の私たちの心にもつながっているだろう。

5 縄文時代の長さに驚こう
私は、この授業をやるとき教室を取り巻くように、あらかじめ1万2千年の長さを表した紙テープを貼っておくようにしている。これで授業をしめくくるために。
┌──────────────────────────────────────┐
│ 縄文時代はいまから1万6千年前から始まりました。
│  このテープは1000年を1mで表してあるので全長16mです。
  縄文時代がいつまで続いたのか予想してみましょう。
│ このへんで終わったと思えるところに立って指さしてみてください。 │
└──────────────────────────────────────┘
席を離れて「縄文時代の始まり」から「いま」までのどこかに立って、縄文時代が終わったと思われるところを指ささせる。
「今」から2000年と少し(2m余)の場所が正解である。
小学生だとここで「えー!?」となる。
頭では2000年とわかっていても、実感がわかないのだ。
縄文時代のテープの長さはあまりにも長すぎるからである。

・1万数千年以上の長い長い時間、ほとんど変化のない、自然の一部のような暮らしが続いたが、何かの理由でそ の時代は終わった。
・縄文時代が終わってわずか2000年で、今になった。

これを確認して、再び席に着かせよう。
そして、こんな感じの「まとめ」をして授業を終えよう。
『長かった、ほとんど変化のない縄文時代が終わってわずか2m(?)で、電気が光り、自動車が走り、飛行機が飛び、人間が宇宙にまでが出かける時代になってしまいました。縄文時代の終わりは、ものすごい変化の始まりだったのです。この縄文時代にもみなさんの遠い先祖がいたはずです。自然の豊かさや厳しさを感じるとき、自然の力や美しさに感動するとき、私は遠い縄文時代の先祖の心を感じるときがあります。しかし、このテープを見ると、縄文時代はすぐそこにあるとも思えます。長い時間をかけて、少しずつ生まれていった偉大なモノに祈る心や、美しいと感じる心などは、日本語によって今の私たちにつながっていると思います。次の時間は、その大きな変化の始まりを勉強しましょう』



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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

コメント

コメント一覧 (2件)

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    いつもありがとうございます。
    素晴らしい授業の文字起こしをありがたく読ませて頂いております。

    私はゆとり世代で、更に歴史が得意ではなかったので(今は大好きで勉強中!笑)このような先生に教えてもらっている子供たちが本当に羨ましいです!とっても楽しくて日本がもっと大好きになっちゃう!

    縄文時代はロマンがありますね☆
    縄文時代の犬の歴史を書いた本がありまして(タイトル失念(*´д`*))、私は犬を飼っておりますので興味があり読んでみました。
    それによると縄文時代の日本人は犬が大好きだったみたいですね!(笑)
    本当に可愛がっていたようです。
    犬を丁重に弔ったお墓や、犬と一緒に埋葬された縄文人のお墓もいっぱいあるみたいです。
    鼠を追っ払う役目は犬だったとか。猫ではなかったんですね!

    ところが弥生時代の遺跡には、今まで無かった【犬を食べた痕跡】があるそうです。
    かつての日本人は、犬を食べる渡来系の人を見て相当ビックリしたんじゃないでしょうか(;´∀`)

    犬への見方一つとっても、縄文人と弥生人はまるっきり違いますから、それはもう大きな衝突があったのでしょうね。。。

    それを、長い時間かけて統一してゆく和の精神って素晴らしい。(もしかしたら縄文系の人が大部譲歩したのかも⁈)

    これからも、頑張って下さい☆
    応援してます!

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    身に余るお言葉を頂戴し、感謝感激です。
    だいぶ年を取ってあまり前進発展できなくなっていますが、
    今後もご愛読いただければ幸いです。
    ありがとうございました。

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