昨日のゼレンスキーへの報復だが一時の怒りではない。
これまでのアメリカの支援は20兆円近くで、アメリカのトランプ支持者はこの戦争のための支出に怒っている。
昨日のバンスの怒りはこの有権者の怒りを代表するものだった。
「俺たちはこんなに貧乏してるのに、好きで戦争やってる奴らにこんな援助をする必要なんかない。しかも。ゼレンスキーやウクライナ人はアメリカにありがとうの一言もないじゃないか!」
トランプとしては支持者の基本的な要求にこたえないといけないから、今日の発表は筋が通っているといえる。
ここから昨日の決裂にもちゃんとシナリオがあったんだとみる報道もあった。
アメリカの支援が終われば欧州だけではもたない。
ロシアは東部諸州だけでなくウクライナ本体を手に入れる可能性も出てきた。プーチンのそもそもの戦争目的はこれで「ウクライナの主権を認めない」=「ウクライナはロシアの一部」だったからだ。
ロシアには東部諸州だけでなく、全部を取りに行く選択肢も可能になる。
ゼレンスキーはプーチンの最終目標がわかっているので「その後の安全保障」が必要だった。しかしトランプはプーチンは約束を守る立派な人だとしか言わない。不信が募っておすがりするしかない人を怒らせてしまった。
トランプはポストモダンの大統領だった。
第二次世界大戦後のモダン世界には、すべての主権国家の主権は対等であるという見せかけ上の理念があった。ユナイテッドネイションズ(UN・連合国・国際連合)がまさにそれで、その始まりにウイルソン大統領の妄想があった。いまにいちばん響いているのは「(なにがなんでも)民族自決」という妄想である。
民族自決で独立した南米やアフリカのバカ国家にはまともな統治能力がない。
だから国民が難民になって流出していた。
「人権思想」が彼らを受け入れることが正しいと言った。それを言うのはアメリカでも欧州でも若者と金持ちだった。アメリカも欧州も正義のためにそうしてきたが流れが変わった。
受け入れた難民があんまり程度が低く悪と悲惨をもたらしたので、アメリカでも欧州でも、金持ちじゃないふつうの貧乏な国民が立ち上がったからだ。(これは民主主義のおかげだが日本ではトランプは政治勢力にすらなれないね)
なんであいつらは祖国を捨てるのか?
なぜ彼らの政府は国民を捨てるのか?
まともな統治能力のない国に「国家主権」なんかない。
移民は祖国へ帰れ。
祖国が独立国で主権があるなら国民を捨てるな。
もしそれを統治できないなら仕方がない。強い国に賢い国に統治をお願いすればいい。
自決できなかった民族には、自前の国家を持つ資格はないということだ。
これがトランプのポストモダンの始まりだった。その後アメリカのアンチ・ニューディーラー、アンチ・リベラルの思想を継承して爆発させていった。
与太話として、メディアではあまり取り上げられないが
「ウクライナで戦争を始めたのはゼレンスキー、おまえだ!」と
いうトランプの発言を重視すべきだと思う。
この発言をちゃんと読み解いていたのは小泉氏だけだったと思う。小泉氏はこれをトランプの本気の発言だと受け止めてこう解説していた。
「たしかにロシアが侵略したが、これに立ち向かわなければ戦争は起きていないし、たくさんの死者も障碍者も出ていない。ウクライナは平和だったんだ。ウクライナが戦ったから戦争が起きたんだ。勝てる戦争ならいい。勝てないどころか、アメリカ人と欧州人の膨大な血税をあてにしないと戦うことすらできないじゃないか。そんなウクライナは戦争をはじめてはいけなかったんだよ」
この小泉氏の考えがほぼ正しかったのは、昨日の決裂と今日の援助停止への流れを見れば明らかな気がする。
これがトランプのポストモダンの第二です。
トランプはかなり本気で「戦争はダメだ」と考えている。その基本が以下である。
戦争とは人を殺し合うことだ。
戦争はなぜ起きるか。
他国を頼らなければ戦えない国が戦うからである。
自力で戦える国が戦争でほしいものを手に入れるのは仕方がない。
できればディールで済ませるのがいいが、ディールでは言う事を聞かない国があるから戦争になるからだ。
そういうおバカな国は暴力で言う事を聞かせるしかないからだ。
国民の利益を考えて政府がそうするのは主権国家の正義なのだ。
こうして悪いのはおバカなウクライナということになる。
一理あります。
まあそれは措くとして、かつてのモダン世界では自由と独立のために戦うことは正義であり、欧米諸国もその結果モダンな国になった。
欧米は世界中の有色人種を支配して幸福を追求したが、世界中の有色人種もこのモダン思想には抗えず、自由と独立を求めて戦争を起こして自分たちもモダンな主権国家になった。
これからは、戦争が悪だから攻め込まれても戦ってはいけないとなるかどうか?
近い将来ロシアの専制に支配されるウクライナや、いま現在中国共産党に支配されているウイグル・チベット・モンゴル、北朝鮮の専制に支配される北朝鮮国民、は戦争ではないから平和だとみなすことになる。
このように、日本の左翼やリベラルの戦争観(平和主義)とトランプの平和主義はよく似ている。弱い側が言うか、強い側が言うかの違いだけです。
どうやらそれが新しいアメリカ・トランプ政権の世界平和像であることは間違いなさそうである。たとえそれが世界に金をばらまけなくなったアメリカ弱体化の結果だとしても。
トランプが西側のヘタレ政党の指導者よりも、プーチンや習近平や金正恩みたいな独裁者が好きなのは、彼らが責任感があって立派な権力者だと見えているからだという意見もあります。
新帝国主義の世界がどうなるのかはわかりません。役者はそろったのでしょうか?
日本がアメリカの属国として生きてきたぬるま湯の80年が終わろうとしているようです。
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