日本が好きになる!歴史授業」の話いろいろ ⑤東京裁判の授業  2



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このあとの授業展開をかんたんに紹介します。

4 東京裁判の判決

4年におよぶ裁判の結果どんな判決が出たかを学びます。
子供たちの予想は全員無罪・全員有罪・有罪と無罪の両方に分かれました。全員有罪の理由は「正しい判決だから」です。全員有罪の理由は「日本を有罪にするための不公平な裁判だから」です。両方の理由は「いちばんありそうな判決だから」でした。
結果はこうです。

5 東京裁判の問題点

◆次に、この裁判の歴史的な評価を検討します。
・最初にズバリ結論です。
 国際法の専門家の評価は『公正な裁判ではなかった』『これは裁判ではなく結論が先に決まっていた政治的な宣伝である』というものでした。

・次に東京裁判が「裁判」とは言えない理由を3つ教えます。

①事後法で裁いた・・・これは罪刑法定主義という近代的裁判の原則に反しています。事件が起こってしまってからそれ裁くための法律をつくってはいけないということです。これでやれば権力者は誰でも法に基づいて死刑にできてしまいます。これは「裁判」が絶対にやってはいけないこととされています。

②検察官と裁判官が同じ国だった

◆これを知ったとき教室に「きったね~」という声が絞り出されるようにひびきました。めずらしく子供の感情が露出した場面でした。

③証拠採用の不公正・・・検察側は伝聞や伝聞の伝聞という証人の発言までが証拠として採用されましたが、弁護側の証拠(公文書など)の大半が証拠として認められませんでした。

6 東京裁判への評価

ここで、現代の日本では東京裁判を正しかったという考えがあり多数であることを教えた。

【資料】
東京裁判に賛成する意見
 この裁判は、世界の平和にとっても、日本人にとっても大きな意味があった。そして、その意味は今も失われていない。理由は次の通りである。
①太平洋戦争は、日本が、中国や東南アジアに対して行った侵略戦争だったことが、この裁判で明らかにされた。「自分たちは、本当は悪い戦争に協力していたのだ」と、日本人が気づくことができたのはこの裁判のおかげである
②日本軍が中国や東南アジアでむごたらしい戦争犯罪をおかしていたことを、日本人はこの裁判で初めて知ることができた。そのおかげで、日本人は自分たちの罪の大きさに気づき、深く反省することができたのである。
③戦争中の日本のリーダーたちが厳しく裁かれたことによって、世界中の人々も「戦争を始めることは犯罪なのだ」と気づくことができた。だから、この裁判は、世界平和のために大いに役立ったといえるのである。

◆これは東京裁判の検察側の意見をそのまま正しいと考えている意見です。

これに対して少数派だが「東京裁判は正しくない」という意見もあるとして、裁判官の一人だったインド代表のパルさんの考えを紹介する。これは実際に書かれた判決文(少数意見として判決には採用されなかった)の要点をまとめたものです。

【資料】
パル判事の無罪判決
 被告二十五名は全員無罪である。その理由は次の通りである。
①日本の戦争には、侵略的な面もあったが、自分の国を守るという面もあった。
 戦った両方に政治の失敗があったのだから、日本だけが悪かったと決めつけるのはまちがいである。
②検察側が言う「日本の戦争犯罪」には、事実かどうか証明できないものが多かった。たしかに、日本軍も戦争犯罪をおかしたが、それらはここにいる被告たちが命令してやらせたことではない。むしろその点では、原子爆弾を落とせと命令したアメリカ大統領こそ裁かれるべきであろう。
これは、裁判に名を借りた復讐である。日本は戦争に負けたことですでに十分に裁かれている。その上、戦争に勝った側が負けた側にこのような復讐を行うことは、世界平和にとってかえって害が大きいのである。
 やがて長い時間がたち、世界の人々が、復讐心ではなく、公平な見方で歴史を見ることができるようになった時には、「連合国は正義であり、日本は悪だった」と決めつけたこの裁判が、正しい歴史の見方ではなかったことが理解されるようになるであろう。

◆暗く沈んでいた子供たちの表情がぱっと明るくなり、周囲の友だちとうなづきあっていたのを覚えています。

このときは使えませんでしたが、のちにマッカーサーの証言も授業に取り入れました。

7 「最後に二つの問いを考える」

この部分は『新版 学校で学びたい歴史』(青林堂)から引用します。

(引用はじめ)
『では、最後に二つの質問をして授業を終えることにしましょう。まず第一問です。この東京裁判のあと、戦争は犯罪だとわかった世界には戦争がなくなったのでしょうか?』
・なくなった(0人)
・戦争はなくならなかった。(全員)
『みんな正解です。日本の戦争が終わってからすぐに、アジアの植民地ではフランス・オランダなどの植民地から独立するための戦争が起きました。それから後も世界には、三百回とか六百回とか数え方によって様々ですが、この六十年の間にたくさんの戦争が起きました。こうしてみなさんと勉強をしている今も、地球上のどこかで戦っている人々がいます。たいへん悲しいことですが、それが世界の現実なのです』

最後は次の問いである。
東京裁判の後、世界の国々は戦争があるたびに、東京裁判と同じような裁判をやってきたのでしょうか?
・裁判を行ってきた(三名)
・裁判は行われなかった(三十二名)
『行われなかったが正解です。理由がありますか?』
「このときの裁判が、戦争に負けた日本だけを一方的に責めたから、もうやらなくなったと思いました」
「パルさんが言ったように、裁判は復讐みたいになっちゃうから、みんなもうやめることにした。戦争が終わったのに復讐をすれば、また戦争になるかもしれないからです」
「こういう戦争に負けた方だけを一方的に責める裁判は、やっても意味がないということがわかったので、もうやめることにした」
『なるほどね。たぶん三人が言ってくれたとおりだと思います。
はい、今日はたいへんいい勉強をしたね。たいへんよく考え、すばらしい意見がたくさん出せました。次からは、この東京裁判が行われた日本、アメリカ軍に占領されていた時代の日本について、考えることにしましょう。これで授業を終わります』

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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

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