動画配信のみの方が多いのでオンラインにリアル参加される方が少ないのが少し残念。
講師としてはぜひ一度お目にかかりたいなあと願っています。
今回からカリキュラムは第5章「世界の中の日本」です。
敗戦で時代を区切らないのでこの章は現在まで続いています。
実はここから現在の日本まではひとつながりです。
大日本帝国滅亡までの昭和前期と戦後日本は「日本の根っこの部分において」連続していると考えています。
後世になってもまだ日本国があって、その現代史を見たら、この時代あたりから第6章「第3の国づくり(古代-近代ーポスト近代)」という別の章(時代)に入っているといいのですが。
明治日本の大目標、「列強と対等な独立日本」という目標は前回の講座で達成されました。
近代化を進め、軍事力を強化し、国力を向上発展させ、戦争でも世界第二位の軍事大国に勝利しました(日露)。
そのおかげで、幕末の不平等条約は完全改正され、西洋列強と対等に交際する独立国日本が生まれました。
世界は列強と植民地と半独立国(従属国)に三分割されていますから、日本は半独立国という危うい立場を脱して列強の一員になったことになります。
今回の「日本が好きになる!歴史全授業」のオリジナルとしては、このゴールした日本が実は大変な運命を背負い込んでいたということを読み取ることでした。
そのために「ラス・ビハリ・ボース事件」というマイナーな事件を教材化しました。
日露戦争後の日本にはアジア各地から留学生や独立運動家が大量に集まってきました。その一人がインドの独立運動のリーダーだったビハリ・ボースです。彼は日本にインド独立の応援団ネットワークをつくり、資金集めや武器弾薬の購入・インドへの持ち込みなどもやっていました。
日本人は幕末から苦労してここまでのし上がってきましたので、植民地のアジアの苦悩に対してたいへん同情的であり、多くの日本人が彼らの独立を願ったのです。日本人の多くが欧米ではなくアジアの仲間だと考えていました。しかし、日本が現在の主権国家の地位を守るためには「世界の支配者グループ」の一員として責任を果たすことを求められます。大日本帝国がインドやインドシナやインドネシアの独立運動を支援して英仏蘭と戦うことはあり得ません。共倒れしかないからです。
この矛盾がいま述べた日本の過酷な運命であり、国内の大分裂でした。
イギリス政府はボースの逮捕と引き渡しを求めてきました。引き渡せばおそらく死刑です。
当時の首相大隈重信は独立運動に同情的でしたが、国家のトップとしては日英同盟こそが最優先でした。ボースの国外追放を宣言し、日付を指定し、もしボースが国外に出なければ逮捕して英国官憲に引き渡す決断をしました。
しかし民間人の多くはこれを認めたくありません。日本は誇りあるアジアの盟主でありたいと願ったからです。
頭山満を中心にインドの独立運動応援日本人ネットワークが動いて、ボースを守り通してしまいました。このボースをかくまったのがカレーの新宿中村屋の当主でした。ボースは彼の娘と結婚しました(このボースはのちのチャンドラ・ボースとは別人です)。
この矛盾に苦悩した日本はやがて「大東亜共栄圏」という夢を紡ぐようになり、昭和になると政権がこれを主張するようになりました。矛盾を解決して日本人が分裂をやめて一つになったとき、大日本帝国は滅亡してしまいました。
「問題」や「矛盾」はその苦悩や絶望をコントロールしながら、なんとかしてその「問題」や「矛盾」を維持し続けるしかないといケースもあると言えるかもしれません。とりわけ主権国家たるもの「問題の解決はかえって滅亡への道かもしれない」と立ち止まってみる勇気が必要なのかもしれません。難しい問題です。
この話は講座の一部です。
授業としては「韓国併合と近代化を進めた日本」「満州事変と満州国の発展」「日中戦争(シナ事変)と通州事件」「南京事件5つの真実」を取り上げました。
ファイナルSeasonの講座はあと2回になりました。いつも応援ありがとうございます!
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