昨日は新都心のコクーンで「君たちはどう生きるか」を見てきた。映画館は久しぶり。妻と一緒も超久しぶりでした。
メディアも宮崎駿ファンもその他大勢が「難解」「わからない」「つまらない」など否定的な発言が多かったので、ファンでもないがこれまで見てきた一人として、これは見なくちゃとなりました。へそ曲がり。
結論を言うと面白かったしよくわかった。メディアには何かしら悪意があったかな。ファンの心理はエンタメじゃない・絵が足りない等々かもしれない。ぼくはアニメの神髄はわからないので。
ただ、ストーリーはちゃんとあるし、登場人物もヘンじゃないし、むしろわかりやすい作品だと思いました。絵のことはわからないが80だからね。それは切れ味は落ちるかも。ぼくなんかには十分美でしたが。
冒頭が素晴らしく、宮崎が自分の原風景を掘り起こしているような迫力を感じました。前半の、活劇以前の部分がぼくにはとりわけよかったね。浸りました。主人公は真人。義母となる夏子が異様に色っぽいのもわかる。しかも冒頭に焼け死んだ母は、この夏子にそっくりなのだ。
そして冒険活劇部分には母の若い頃のヒミが出てきて一緒に冒険して抱き合ったりする。少年が女によって男になっていくというモチーフはこれまでも出てきたが、これはオイディプス願望がもろに出ている。ここは大東亜戦争の日本です。
青鷺の案内で義母の連れ去られた異世界に行き、拉致された義母を救う王子になるのがファンタジーの活劇部分になる。この異世界は死んだ祖父がつくったもので、彼は苦悩している。罪も悪もない世界を創造したはずだったが、現実は過剰なまでに死が満ちあふれた世界になっていて、インコの暴力的専制でしか世界が持たない。懸命にバランスを取ろうとするがユートピアは全体主義の暴力で成り立っている。祖父は真人に後を継がせようとするが、真人は断る。そして義母と若いころの母と青鷺とキリコさんと一緒に、罪も悪もある戦争時代の日本に帰ってくる。異世界は核爆発のイメージで崩壊していく。
真人はユートピアの建設を断って、罪も悪もある(しかし友人がいる)大東亜戦争の日本に戻り、一緒に笑う。
たぶんこの後、戦争に行くことになるかもしれない。その前に敗戦が来るのかな。
「君たちはどう生きるか」を書いたのは、大正教養主義を受け継いで、やがて共産主義に行き、治安維持法違反で投獄されたことがある吉野源三郎。戦後は岩波知識人として生きた。
真人は「君たちはどう生きるか」を読んで涙するが、ユートピアは信じない。ウソは嫌いで正義感もあるが、色っぽい女も好きなんだ。罪も悪もあるが、理想社会を目指して大量に殺しまくるよりははるかにましだろうという健康な少年なのだ。
宮崎はいまも東宝争議以来の左翼かもしれないがとても健康な左翼であり、宮﨑アニメはやはり大したものです。
改めてファンになったかもしれない。
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