改訂版17「日清戦争」



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★日清戦争から日本の侵略が始まったと多くの教科書は教えている(もちろん自由社『新しい歴史教科書』はちがいます)。小学校でもほんとうの歴史を教えましょう。国民のくやしさ、リーダーたちの無念さ、これらに共感してこそ日本人の歴史です。

1 朝鮮は日本の「利益線」

『次の資料を読みましょう』
【資料】明治二十三年(一八九〇年)山県有朋首相の演説
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主権線と利益線 
わが国の予算の中で最大の出費(しゅっぴ)は、陸海軍の費用です。
 そもそも国の独立と安全を守るには二つの道があります。
 一つは国の主権線(しゅけんせん)を守ること。主権線とは領土の境界(きょうかい)(国境)を守ることです。
 二つは国の利益線(りえきせん)を守ること。利益線とは国の主権線の安全または危険に密接(みっせつ)に関係している地域を守ることです。
 さて、この利益線を考えない国はありません。
 とりわけ、西洋列強(せいようれっきょう)の進出するアジアにあって、わが国の独立を守るためには、ただ主権線を守るだけでは不十分なのです。
 利益線を守らなければ、日本の安全はありません。
 そのためにも、この予算案にあるように巨大な金額を陸海軍の費用にあてなくてはならないのです。
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◆板書:主権線(国境)
◆明治日本の国境線を教える・・・資料の白地図に朱線を引かせる
┌───────────────────────────────┐
│ 山県有朋の言う利益線とは具体的にどこのことだと思いますか? │
│  A:樺太    B:朝鮮半島  C:台湾 │
└───────────────────────────────┘
*意見分布をとるだけで正解を教える。
◆正解はBの朝鮮半島・・・・ロシアの危険について簡単に説明する。
◆板書:利益線=朝鮮
◆伊藤や山県や陸奥は、朝鮮にこうなってもらうことが、日本の安全にとって重要だと考えていました。

◆板書:日本の期待
①朝鮮の文明開化(近代化)
②日本との協力
┌──────────────────────────────────────┐
│  しかし、そうは日本の思い通りにはなりません。明治政府ができてからずっと朝鮮│
│ にそう要求してきたのですが、朝鮮の李王朝は日本の言うことに耳を貸しません。 │
│ 実は朝鮮はある国と「親分子分の関係」にあったからです。 │
│ その国は朝鮮を自分たちの子分の国だと考え、朝鮮はその国をご主人様だと考えて│
│ いました。 │
│ さて、その国とは次のどちらでしょうか? │
│  A:清    B:ロシア │
└──────────────────────────────────────┘
*意見分布をとり、理由を言わせる
『日本が聖徳太子の時にやめた関係を、朝鮮はなんと大昔から今まで続けていた。また日本は朝鮮の弟分であるはずなのになんだとバカにしていました』
◆日本の朝鮮への期待を実現させるには、まず朝鮮に清から独立してもらうことが必要でした。

板書:日本の期待③朝鮮の清からの独立

2 日清戦争

『しかし、朝鮮にも変化が来ました。日本と協力して李王朝を倒し朝鮮の明治維新をやろうという独立派と、中国派が争うようになりました。東学党の乱という朝鮮王朝への反乱が起きたとき、中国は軍隊を朝鮮に送りました。それを見た日本も朝鮮に軍隊を送り、戦争になりました。これを日清戦争といいます』
◆板書:日清戦争(明治27年・1894年)

◆アメリカにいた松岡洋右(14歳)のエピソード
日清戦争が始まると、ほとんどのアメリカ人は中国は知っていても日本は知らないのでこう言いました。「大国シナには日本という県があって、それが政府に反乱を起こしたらしい」また、日本を知っている人も「こんな小国がシナを相手に戦うなんて無茶だ。かわいそうに、いまにきっとひどい目にあうぞ」

『当時、清国は眠れる獅子といわれた大国です。アジア最大の軍事力を持っていました。日本はそれにようやく追いつこうとしていました。厳しい戦いになるはずでした。しかし、日本はすべての政党、国民が戦争を支持しました。国家予算の2年半分の費用と10万人の兵隊を投入しました。全力を挙げて戦わなければ、西洋にやられる前に、シナにやられてしまうと考えたからです。その結果、陸の戦いも海の戦いも、日本の圧倒的な勝利に終わりました。それは、世界中が「アジアに日本あり」と知った日になりました。』

◆板書:日本の圧勝
    勝因:国民の団結と愛国心、日本は国民軍、清国軍は傭兵

3 下関条約

『戦争は日本の圧倒的な勝利に終わり、下関で講和会議が開かれました。日本の全権大使は伊藤博文、外交官は陸奥宗光でした。そこで結ばれたのが下関講和条約といいます。講和条約とは平和条約のことで、ふつう戦争は戦った両国がこの条約を結んで終わります。条約が結ばれたら、もう戦争中のことでは絶対に争わないというのがルールでした。』
┌───────────────────────────────────┐
│ 条約の第一条には、日本がこの戦争に勝って一番重要だと考えたことが書かれ│
│ ていました。それは次のうちどれでしょうか? │
│ ■板書「下関条約」 │
│  A:朝鮮を完全な独立国とする。 │
│  B:台湾・遼東半島を日本の領土とする。 │
│  C:賠償金(日本国家予算の4年分) │
└───────────────────────────────────┘
◆正解はAでした。
◆下関条約①朝鮮は清から独立する。
②台湾・遼東半島を日本の領土とする。
③賠償金(日本国家予算の4年分)
ところが、この条約を知ったロシアは、ドイツとフランスを味方にして日本に強い要求を突きつけました。

4 三国干渉と臥薪嘗胆

┌────────────────────────────────────┐
│ 「遼東半島を清に返せ。さもなければ戦争だ」 │
│ これを三国干渉といいます。 │
│ みなさんが日本のリーダーの一人だったら、この要求に対して、どんな決断を│
│ したでしょうか? │
│  A:要求を受け入れる   B:要求を拒否する  │
└────────────────────────────────────┘
*挙手でAとBの人数を確かめ、理由を言わせる。
◆国民世論は、断固拒否して西洋と戦おうとわきあがりました。
 政府(伊藤博文や陸奥宗光)は、「いまロシアと戦えば国が滅びる。国民よ我慢してくれ」 と言い、遼東半島を清国に返しました。

『清の弱さが明らかになり、西洋列強はハイエナのように清に進出していった。
3年後、ロシアは遼東半島を清からうばいました。
そこに軍隊を駐留させ、支配したのです。
(「えー!?」「何だよ~!?」「ロシアきたねえぞ!」)
せっかく清から独立させた朝鮮はロシアに支配される可能性が大きくなりました。
日本の厳しい状況が続きます。
「結局は力が正義なのか」という気持ちが国民に広がり、「臥薪嘗胆」という合い言葉がはやりました。今に見ていろつらい思いをがまんしても、日本を強い国にするぞ、いつかは仇を討つぞ、という意味です。』

*「臥薪嘗胆」とノートに書かせ、みんなで合い言葉を唱える。

◆板書:戦争の結果:清に西洋が進出、遼東半島はロシアが取った。

『朝鮮半島をロシアに取られたら、大変なことになる。しかもそれが目の前に迫ってきたのです。日本はどうすべきなのでしょうか。この頃流行した蛍の光の4番はこういう歌詞でした。日本の領土が歌われています』
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千島のおくも
おきなわも
やしまのうちの
まもりなり
いたらんくにに
いさおしく
つとめよわがせ
つつがなく
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◆これを歌って授業を終える。(拍手!)


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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

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