中学「日露戦争後の日本の目標を考える」



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★教科書とは離れて、明治の目標達成した日本はどんな新しい目標を持つべきか。
それを生徒に考えてもらい、話し合っててみる授業をやりました。
これは以前ご批判を受けた授業ですが、わたしはやはりこれをどうしてもやりたかった。
完成した近代日本は列強がルールを作った国際社会でどう生きていけばよいのかという難問である。

1 列強と対等につきあえるようになった日本

・これまでの授業を振り返り、日本の現状を整理した。

ポイントは、
①列強との不平等関係はなくなり、日本は列強の一員となった。
②軍事的にも世界第2位の超大国を破り、帝国陸海軍にちょっかいを出せる国はなくなった。
③列強と同じように、台湾と朝鮮半島を領土とした。
*日本は植民地ではなく、支配する側に立っている。

しかし、日本はこれまで列強に奴隷化されたアジア人や黒人に「独立への希望」を与えた国だった。努力すればできると。
インド・インドネシア・ベトナム・フィリピンなどからは独立運動家が留学してきて、日本の援助を期待する。

2 日本の進路を考えよう

 みなさんはこの日本生リーダーとなって、日露戦争後の日本の進路を考えてください。
 いつものようにのーとにその理由を書きます。

選択肢は2つに単純化します。

A 帝国主義列強の一員として、日英同盟を基本として友好を保ちながら生きていく。
B 植民地アジアの独立運動を助け、国際社会における人種平等の実現をめざして生きていく。

*2クラスでやり、結果は、
 A:20名、
 B:34名、でした。

3 主張を発表する

A 自分が決断を迫られたらきっとBを選んじゃいそうだけど、ここはぐっと冷静になってAです。
 せっかく列強と対等な実力を得たのに、アジアの独立運動を援助したら、そこを支配している列強は必ず日本に侵略してくる。前列強を相手に戦ったら日本は負けます。

A Bにしたら西洋列強すべてを敵に回してしまい、孤立してします。どんなにロシアに勝っても英露仏米を一気に相手にはできない。帝国主義の立場を貫いても、自分の支配地はやつらとちがって近代化を進める。そうすれば、さらに強くなって、いずれはBの可能性も出てくる。

A まず自分たちがもっと強くなってからアジアを助けるべきだと思います。自分のこともままならない状態で、他国人の心配をしてはいられません。

A 理由はせっかく築き上げたこの地位が落ちてしまうし、同じ有色人種とはいえ別の国だから、努力して上り詰めた日本を見習って、亜細亜もアフリカも自力で支配から抜け出すべきだと思った。これから独立戦争があっても、有色人種側についていたら白人を敵に回すことになる。白人とはこれからも対等につきあっていくべきだと思った。

B 日本は不平等条約を改正して、有色人種で日本だけが列強になった。だから、有色人種の立場がわかるのは日本史かない。だから日本にはBをやる指名がある。

B日本が帝国主義列強に入ってしまったら、今まで支配から逃れてここまでやってきたのに、外道にやられたことを同じ有色人種にやり返すことになってしまう。日本人と同じ立場だった人たちを助けるのは日本人だったら絶対だと思います。日本人の心を変えちゃダメです。

B 日本は自分たちの国を支配され、下に見られるのがイヤで、ここまで自力で這い上がってきたから権力を得た。今こそ、世界に平等を教えたら良いと思う。Aではその先の世界は何も変わらない。世界の人種差別を変えることこそ日本の新しい目標だと思う。

B 日本はアジアの独立を目指すべきです。奴隷をあたりまえに思っている白人西洋列強と同じ道に進むのは、西郷さんも言っていましたがおかしいです。日本は相当な努力をしてここまで来たけれど、他の国を助けてあげないと、列強と対等になったとは言えないと思います。日本だからこそ、アジアの人々の苦しみをわかってあげることができます。独立を目指すアジア民族を支えるのが、新しい日本の指名だと思いました。西洋と一緒になってはダメだと思いました。

B 私はBに賛成です。なぜなら、列強の仲間入りをして、全世界を列強が支配したら、今度は列強同士の戦いが始まってしまいます。そのとき最初にたたかれるのは日本です。日本は黄色人種だから、いくらがんばっても結局はなめられると思うからです。もしそうなるなら、はじめからみんなで独立を目指した方がいい。

B 私はAのほうが立場が固められるし、お金とかだってsれほどこまらないと思うけど、白人のように植民地をひどく扱うことはとても日本にはできないことだと思うので、Bにしました。Bはいまの韓国みたいに恩を仇で返さあれるようなことがあるかもしれないけど、アジアの人々を助けること、世界の平等と平和を望むことは、日本人の大和魂だと思いました。

★なかなか濃厚な話し合いになりました。よく考えています。
世界の大国になった日本が、国際社会にある人種差別の中で、きわめてアンビバレントな立場に立たされていることが、生徒たちにはなんとなくですが、理解できました。

第一次世界大戦から大東亜戦争までこの両義的な立場が日本を縛りました。
これは頭が狂いそうなほど非常に困難な立場ですね。
しかし、日本はここで生き抜かなければなりません。
まさにそれが世界史的宿命でした。

台湾・朝鮮を徹底的に収奪せず、国民として認めて近代化を進めたことが、まずそのあらわれでした。

しかし自ら努力しないアジア人の中には日本を裏切り者呼ばわりする者も出てきます。

インドやベトナムの闘士が日本行きますが、もちろん政府は彼らを表立って援助することはできません。列強の政府から逮捕・強制送還を求めてくるからです。
彼らを助けたのは民間の言論人やアジア解放運動家たちでした。

日本の中に、さまざまな分裂が現れてきます。
次回は第一次世界大戦を見てみましょう。


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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

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