★明治日本の国づくりの大目標を確認し、そこに到達するための政策を考えます。ここをしっかり自発的に考えておけば、日露戦争と不平等条約の完全改正までは、一つながりの大きな歩みとして理解できます。抽象的な平和主義や人権思想などで、先人の死にものぐるいの努力と苦闘の歩みを汚してはなりません。史実をありのままに受け止め、先人の歩みに共感していきたいと思います。また、聖徳太子の政策との1000年を超えたつながりに気づかせます。当然のことですが子供はたいへん感動します!
1 明治の国づくりの大方針
『すべてはペリーから始まりました。藩をこえて国を思う志士たちは、徳川幕府では日本はもたないと考え、15年の混乱を経て、明治新政府をつくりました。でも、この新政府はまだまだ弱く心細い赤ちゃんの政府です。これから、しっかりと国づくりの目標を立てて、それをめざす政治を着実に進める必要があります。それは新しい日本をつくる大仕事です。そのためには、聖徳太子がつくったような国づくりの設計図、大方針が必要です。いいかげんなことをしていたら、江戸幕府よりもダメな政府になってしまうでしょう。そう考えた多くのリーダーが「国づくりの大方針」を考えました。それを考えた人を二人紹介します』
■木戸孝允と坂本龍馬の絵をはる。
今日はこの2人が考えた「国づくりの大方針(政策)」に挑戦します
2 まず「国づくりの目標」を確認する
みなさんは明治維新を成し遂げた維新の志士たちです。まず始めに、みんなで「国づくりの目標」を考えましょう。
キーワードは「西洋列強」です。「西洋列強」を使って、目標を書いてみましょう。
■5分ほど与えて、書かせる。
◆列指名で発表させる。おもな意見を板書する。高杉晋作の授業を想起させ、次のようにまとめる。
明治新政府の国作りの目標(ゴール)
→「西洋と対等につき合える国(独立国)をつくる」
*プリントにていねいに清書させる
*説明のための【板書】をする。
上:西洋列強(独立国:植民地を支配している)
中: 日本(西洋と不平等関係:半独立国)
下:アジア・アフリカなど(西洋に支配されている植民地)
*支配被支配関係を図示する。
『この上下関係をやめて、西洋と対等になることが目標です』
3 班の「国づくりの大方針」(一斉授業ですすめても可)
今日はみなさん全員が明治維新の志士として、目標を実現するための方法・政策を考えます。
「目標を実現するために政府は何をやるべきか」です。
当時のリーダーになったつもりで国のために真剣に考えてください。
これは班ごとにまとめてみましょう。
◆席を班のかたちにする。
◆5分ほど与えて、各自自分で書かせる(箇条書きにすること)。
◆班のなかで司会者を決め一人ずつ発表させる。司会者はメモを取る。
司会者「他の人は賛成意見、反対意見、その理由を話してください」
◆司会者は賛成が多かった意見を班の考えとしてまとめる。
◆席を一斉授業のかたちにもどし、班の代表にそれを発表させる。おもなものを板書する。
4 五か条のご誓文と船中八策
『では、はじめに紹介した2つの大方針を読んでみましょう。ひとつは坂本龍馬が死ぬ前に書いた「船中八策」といわれる大方針です。もうひとつは、木戸孝允が書いて、明治天皇の名で発表された、政府の大方針です。「五箇条のご誓文」といいます。』
『みんなの考えたものの中に同じ考えがあるかもしれません。注意して読みましょう』
■資料を配り、読みあげながら黒板の中に同じ内容のものや近い考えがあればマークして賞賛する。また、班の中で消されていた考えがあるかもしれないので、そういう場合は必ず言わせるようにする。
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五箇条のご誓文(ごかじょうのごせいもん)=木戸孝允
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│ 1 広くすぐれた人物を集めて会義を開き、 │
│ 国の政治は、国全体のことを考えて決めるべきだ。 │
│ 2 上の人も下の人も、心をひとつにして、 │
│ 産業をさかんにし、豊かな国をつくるべきだ。 │
│ 3 すべての人の志(こころざし)が実現できるような国にして、 │
│ 人々のやる気が出るような世の中にすることがだいじだ。 │
│ 4 江戸時代の古い習慣やしきたりにとらわれないで、 │
│ 国際法(西洋の国どうしのルール)にもとづいて │
│ 国づくりを進めるべきだ。 │
│ 5 すぐれた知識や文化を世界から学んで、 │
│ 天皇中心の国日本をいっそう発展させていくべきだ。 │
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坂本龍馬の「国づくりの大方針」(船中八策)
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│ ①幕府は政治権力を朝廷に返し、天皇中心の政治にする。 │
│ ②議会を作り、議員を選び、国の政治は国全体のことを考えて │
│ 決める。 │
│ ③貴族・武士・一般国民という身分にとらわれず、能力のある人を│
│ リーダーにする。 │
│ ④外国とのつきあいをすすめ、新しく正しい条約を結ぶ。 │
│ ⑤古くからの法律を改め、新しい憲法をつくる。 │
│ ⑥海軍を育て、強くする。 │
│ ⑦国の軍隊をつくり、首都を守らせる。 │
│ ⑧貿易における、西洋と日本の不公平をあらためる。 │
│ │
│ ◆これを実行すれば、日本は国力をばんかいし、国の勢いを高め、 │
│ 「日本を、西洋と対等につきあえる国にする」という大目標を │
│ 達成することができるのである │
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5 まとめ・・・聖徳太子の国作りの大方針
昔これと同じような「国づくりの大方針」を考えた偉大な人物がいました。
明治政府はそれとほとんど一緒、同じことをやろうとしたと言えるのですが、それは誰でしょうか?
*聖徳太子
◆1学期のノートを見て確認させる。
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聖徳太子の国づくりの大方針
1 中国の文化を取り入れるが、日本の伝統も守る。
2 天皇中心にまとまる国をつくる。
3 中国に支配されない、独立国をつくる。
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『外国が「中国(シナ)」から「西洋列強」に変わっただけですね。
維新の志士たちが聖徳太子に学んだという直接の証拠はありませんが、中国中心の世界の中で国作りをして独立した古代の日本と、西洋中心の世界の中で国作りをした幕末から明治とは、まるで同じことがくりかえされているように見えます。
これが日本人の心であり、伝統であり、日本人の賢さであり、強さであると言えると思います。さてこれから明治の日本人の血のにじむような努力を一歩一歩たしかめていきましょう』
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