3 ロシアの侵略から日本を守るために
ロシアの侵略から日本を守るために、どうしたらよいか。
2つの方針が対立した。
A 日露同盟で戦争を避けよう(伊藤博文)
B 日英同盟で日露戦争に勝利しよう(小村寿太郎)
みなさんが内閣の一員だったらどちらを指示しますか?
5分時間を与えてノートに書かせました。
生徒の意見分布はこうでした。
A(8名) B(19名)
Aの意見
・ロシアと同盟が結べれば、戦争にならないから安心できる。
・戦争はできるだけやらないほうがいい。たくさん人が死んでしまう。いいことはひとつもない。
・戦争はいやだ。ロシアと仲良くすれば両方が傷つかないし、発展できる。
・戦争はさけて、なつべく平和な日本でいたい。ロシアは強国だから同盟すれば他の国から攻められることもなくなると思う。
Bの意見
・ロシアと同盟を組んでも、超大国なので結局下に置かれる。イギリスとだったらロシアに勝とうという同じ目標を持てるから協力できる。
・列強とは長いつきあいになるのだから、なるべく強い方と組んだほうがいい。
・シベリア鉄道で兵力を増やすから、今のうちにおさえなきゃ。打倒ロシア!!
・僕はイギリスと組めば無敵でロシアにも勝てるし、勝てばもう恐れることもなくなる。しかし、イギリスに国が乗っ取られないようにしたい。イギリスの方がロシアより話合いで解決できると思う。
・Aはロシアとの戦争を避けると書いてあるが、それはイギリスつぇんそうをする可能性が出てくる。どちらの戦争が日本に有利かと考えれば大英帝国を選んだ方がいい。貿易もイギリスとする方がメリットが多いと思う。
ここで教科書の小村寿太郎の意見書を参照する。
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《日露条約の問題点》
1 一時的に平和が得られてもロシアの侵略主義は止まらない。
2 シベリアの経済利益は小さい。
3 清国人はロシアを嫌っており、清における日本の利益に反する。
4 英国の海軍力と対抗しなければならない。
《日英同盟の利点》
1 英国は領土拡張ではなく通商利益が目的だ。英国と組めばロシアの野心をおさえられる。
2 日英同盟は平和目的で国際世論から支持される。
3 英国と結べば清国の信頼も増す。
4 韓国問題を解決するには英国と組んでロシアをおさえるしかない。
5 通商上の利益が大きく、シベリアとは比較にならない。
6 ロシア海軍のほうが対抗しやすい。
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というわけで、伊藤博文らも説得され、日本は大英帝国と同盟を求めました。
英国は、名誉ある孤立を保ってきた世界1の超大国ですが、ついに小村寿太郎の交渉が実り世界をあっと言わせました。
義和団事件での帝国陸軍の活躍が英国の信頼を得る上で大きかったそうです。
1902(明治35年) 日英同盟締結
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日英同盟
第1条 清韓両国における両国の権益を互いに認める。
第2条 日英どちらかが開戦したら、片方は中立を守り、他国の参戦防止に努める。
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生徒は「なんだ共同で戦うんじゃないのか・・・」と不満げでした。
小村寿太郎はこう書いているよ。
「日英同盟に期待している人は多い。しかし、英国は日本の危機を心配して助けてくれるようなドン・キホーテではない。同盟で英国が日本のために戦うとしたら、英国も代償がいる。しかし、英国は日本が同盟国として共にヨーロッパで戦う力があるとは思っていない。この条約は英国にとっては東アジアへのロシアの進出を食い止め、英国の利益を守るのに役立つとみているに過ぎない。それでも、この同盟があれば、日本はロシア相手に戦うことができるのだ」
自分の国は自分で守るしかない。この同盟があれば、日本はひとりでも超大国ロシアと戦えるのだと言っています。戦争でも英国海軍に頼ろうなどとは考えていないのですね。
案の定、ロシアは韓国に手を伸ばします。
日本はシベリア鉄道による兵隊や大砲などの輸送を放置すれば、日本に勝ち目はなくなるとして開戦のチャンスをうかがいました。日英同盟から2年後、ついにアジア唯一の近代国家日本と、世界第2位の超大国ロシアの戦争が始まりました。
1904(明治37)年 2月8日 日露戦争開戦
戦いの行方は、次の授業です。では、ごきげんよう。
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