授業「第二次世界大戦の始まり」(前半)



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2年生の2学期最後の授業でした。
つくる会歴史教科書(自由社)の「第二次世界大戦の始まり」です。

授業の中で、問題を1つ出して意見を書かせるようにしています。
今回は「日本の政策選択・・・北進か南進か?」としてみました。
それまでの説明の流れは以下の通りです。

1936(11)日独伊防共協定、この年はコミンテルンの人民戦線作戦が、フランスやスペインで成功して、共産主義が一気に伝染していった年でした。この条約はドイツと日本でソ連をはさむのがねらいです。ソ連は日本の最大の脅威でした。
その後、シナ事変が起きて続いています。

1939(14)8月、独ソ不可侵条約、これは防共協定への裏切りですが、同時に日本がソ連と戦争(ノモンハン事件)をしている最中でしたから二重の裏切りでした。ノモンハンの話。ドイツ(ヒトラー)は第一次世界大戦の復讐を始めるために、背後の敵と手を結んだんですね。

1ヶ月後の9月にはポーランドに攻め込み西半分を取りました。
東半分はソ連が取ったので、この戦争の始まりは「ドイツとソ連がポーランドを侵略した」が正しい。

ポーランドと同盟関係にあった英仏がドイツに宣戦布告しますが、すぐには動かなかった。これも平和ボケ。
デンマーク、ノルウエー、フランス・・・ヨーロッパはあっという間にドイツが占領してしまいました。

さてそのころ日本は、米内光政内閣が倒れて、シナ事変を始めた近衛文麿が首相となって第二次近衛内閣です。
外相の松岡洋右は、日独伊とソ連が連帯して、4国で米英と対抗すれば力のバランスによって平和がやってくるという大構想で動きます。

1940(15)、日独伊三国同盟締結。

1941(16)4月、日ソ中立条約。これで「日独伊+ソ連」の松岡構想が実現しました。実行力もなかなかです。

ところが、ここでまたドイツが裏切ります。
2ヶ月後の6月、イギリス占領をあきらめたドイツ(ヒトラー)が、いきなり不可侵条約をやぶってソ連に攻め込みました。こうして、4国連合が壊れてしまし、またも日本の平和戦略は破綻してしまったのでした。

そこで、諸君にはまた祖国日本の指導者となって、日本の進むべき道を考えてもらいます。いつものように、実際はどうなったかを考えるのではありません、正解のある問題ではありません、いままでの授業で学んだことを生かして、日本の進むべき道を考えてください、どちらを選ぶかではなく、そうする理由を考えることが重要です、と話します。5分時間を与えてノートに書かせました。

A 南守北進・・・ドイツと日本でソ連をはさみうちにして、日本最大の脅威でありつづけた共産主義ソ連を滅ぼす。シベリア資源(石油)を獲得する。

B 北守南進・・・英米との対決も辞さず。南に進んで援蒋ルートを断ち、日中戦争を終わらせる。東南アジアの資源(石油)を獲得する。やがては東南アジアの植民地解放をめざす。

意見の分布は、

2組は、北進(19人)、南進(13人)
3組は、北進(11人)、南進(20人)

となりました。逆転した理由は不明です。合計がほぼ同数になっている不思議。

ノートに書かれていたことを載せてみます。理由が書けていない生徒もいました。

(北進派)
・独ソ不可侵条約でできなくなっていた共産主義をつぶすことがもう一度できるようになったから。

・資源のメリットはだいたい同じだから、これは英米を敵に回すのか、ロシアを敵に回すのかを考える。リスクが少なく、負ける確率も少ないのは日独でソ連をはさみうちにする北進だと思う。

・英米を敵にまわしたらドイツも一緒につぶされそいうだから。資源が一緒なら、できるだけ強くなる方がいいと思うから。

・たとえシナ事変の真の敵は英米だとしても、先に共産主義をつぶさないとまた戦いをするかもしれないし、面倒な国だと思うから。

・日本は共産主義をつぶすことが大事だし、つぶそうとしていたのだから、それを今やれるチャンスが来た。今やるべきだと思った。

・世界の平和と秩序を乱す共産主義をつぶすのがまず第一だと思ったから。

・とりあえず最初の目標である共産主義をつぶすことを最優先する。

・南進を選んだら、ドイツと日本だけでは英米には勝てないのではと思った。コミンテルンのスパイがいることによって、日本国内のもめごともあったと思うので、まずは日本の安全と団結を考えるべき。ソ連に勝った後、日独ソで英米と戦うことも可能になると考えました。

・私は共産主義に良い思いを抱いたことはなく、共産主義こそこそ危険だと思っているし、ドイツと協力するというところにひかれたからです。また、南進だと戦争を重視していて、恐いことになりそうだからです。

・共産主義があっては、国がおかしいままだからです。

・はさみうちにされる前に、はさみうちにするほうが必勝。

・ソ連をドイツとはさみうちにしてつぶしたほうが、共産主義がつぶせるし、英米二国と戦うより、ソ連一国と戦った方が勝つ確率は高いから。

・今こそ共産主義をつぶすチャンスであり、次はないかもしれないから。
・とにかく共産主義をつぶしたい。そうすればスパイが消えるしハッピーだ。

・共産主義でのちのち被害を受けるなら、早めにつぶしておく必要がある。シベリアの資源を確保できるので一石二鳥だ。また、ソ連は昔から日本の脅威であり、日本がソ連に支配され共産主義になる可能性があるので、ソ連を攻めた方がいいと思った。

・このまま英米と戦争になったら、いつまたドイツが裏切ってくるかわからないから。

・植民地の解放は次でいい。ソ連をここでつぶしておけば、ソ連に裏切られることがなくなり、資源を確保することによって、武器や燃料を外国にたよることがなくなるから。

・ドイツと組んで共産主義をつぶしたほうがいいと思う。英米と戦争をしたら、日本の借金も増えるし、また多くの死者が出るし、勝つという保障はないから。

・ソ連は国土も広いし、シベリアの資源が多そうだからです。共産主義はぜったいにつぶしたほうが良いからです。

・日本には資源がないので、英米と対立してしまったら負ける可能性は高く、支配されてしまう。確かに、アジア植民地の解放は大事だが、負けてしまっては意味が無ないので、もう少し力をつけてからの方がいいと思った。

・共産主義をつぶした方が、今後の日本のトラブルを減らせると思ったし、こっちのほうが勝てる戦争だと思った。

・日本の前からの目的が達成できるから。

・ソ連は日本の最大の脅威であり、ソ連が完全に日本の味方にできれば、日中戦争も終わりに出来るからです。

・英米に勝てる自信は無いから。

・はさみうちだから、こっちのほうが勝てそうな気がするから。

(南進派)
・南進すれば援蒋ルートを切れるから、英米にやられる前に日中戦争を終わりに出来ると思う。まず日中戦争を終戦にして、すぐに英米と戦って勝てば、いろいろとメリットがあると思う。

・このまま日中戦争を続けるとずっと終わらなくて、国が滅びるかもしれないし、明治から思ってきた植民地解放ができるかもしれないから。また、英米には、日中戦争でうらみがあるから。

・ぼくは歴史が苦手なのでよくわかりませんが、アジアの植民地が解放できれば、まわりが強国ではなくなるため。

・北進はドイツと組むことになるが、ドイツは信用できない。南進すれば、石油だけでなく鉄も手に入ると思うから。

・ソ連(共産主義)とドイツ(ファシズム)の思考が似ているため、日独で協力しても危険が多い。ドイツがソ連を取った場合、ドイツは条約を破ることがあるので、日本にまで侵攻してくる可能性がある。

・北進すると、もっと戦争が激しくなってしまい、犠牲者が多くなってしまうので、南進のほうがよいから。

・南進の方が日本にとって利点が多いから。

・北よりも南の方が重要だから。

・早く日中戦争を終わりにしたい。そのためには南進すべきだと思う。

・アジアの植民地を解放し仲間にする。

・アジアの植民地解放は明治日本からの夢であり、それがかなうし、石油資源も手に入るから。

・南守北進すると、裏切ったドイツと一緒になってしまうではないか。となると、ドイツだけならまだしも、日本も共に四国(日独伊+ソ)とで条約を結んだ意味が無くなる。だから、北進よりは多少リスクはあると思うが、南進のほうが日本にとっても、ドイツを除く2国(伊・ソ)にとっても有益ではないかと考えた。

・やはり真の敵を一番に倒したい。勝てばアジアの植民地が解放できる。

・ドイツと組んでもソ連に勝てる自信がない。南なら攻められるし、植民地を解放することも可能になると思ったから。

・ドイツには2回裏切られているから、また何が起こるか分からないから。

・アジアを解放すれば日本の見方が増えると思うから。

・北進だと松岡さんに対立した人が「ドイツは裏切る」と言っていたので危険だと思った。資源については寒いシベリアよりは東南アジアの方が有利だと思う。条約どおりソ連との中立を守れば、北は大事にはならない。植民地を解放するような戦いが出来れば、世界を平和に出来ると思った。

・北進だとドイツと手を組まなければならない。私はもうこれ以上ドイツに裏切られるのはいやです。

・北進してまたドイツに裏切られたら元も子もないから。南進ならアジアの国々と連携して強い国々とも戦えると思うから。

・共産主義は強いのでできるだけ戦争はさけたほうがいい。

・私は共産主義をつぶすことよりも、アジアの植民地解放を優先させたい。難しくてほんとうはよく分からないが、もともとは平和を願っているので、植民地の解放は平和への第一歩だと思います。

・日本の真の敵は英米だということを見失わずに戦う。日ソ中立条約は守りたい。

・共産主義はとても強く、そう簡単につぶせるものではない。逆に共産主義に支配されたら恐ろしい。まだ植民地を解放する戦争の方がいいと思ったから。

時間はなかったはずですが、授業感想文を書いた生徒がいました。
「2学期最後の授業でした。ヨーロッパの平和ボケがなければ・・・と思いました。デンマーク占領まで4時間には驚きました。平和になるためには、どこかの国が犠牲になり、復しゅうも生まれることを肝に命じておかなければいけないと思いました。」

以上が前半で、ここでチャイムが鳴ってしまいました。

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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

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