授業:中国の皇帝と日本の天皇



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●この授業は『新しい歴史教科書』(自由社)古代の章のまとめにあたるコラム「中国の皇帝と日本の天皇」を理解させるために行いました。同社発行の教師用指導書にもとづいています。

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『984年、宋の皇帝太宗は、日本から来たおぼうさんに、深いため息をつきながらこう言ったそうです。

「日本の天皇こそ理想だ。うらやましいかぎりである」

世界の大国中国の皇帝が、なぜこんなことを言ったのでしょうか。自分の考えをノートに書きましょう』

●5分ほど書かせてから、列指名で発表してもらったらこうなりました。

・ぜいたくな暮らしをしているから。

・日本独自のすばらしい文化をもっているから。

・家臣にしたわれているから。

・家臣に反乱を起こされないから。

・天皇は親から子へ受け継がれるが、皇帝はいつか滅ぼされてしまう。

・天皇は争いが少なく平和だ。

・仁徳天皇のころからずっと国民に尊敬されているから。

・国のまとまりの中心だから。

・天皇は武士にも滅ぼされないから。

・日本は、隋や唐や元のように、国が変わっていかない。

・中国の皇帝は倒されて違う国になってしまうが、日本はずっと日本だから。

・神様(天照大神)の子孫だから。

●とくに検討はせず、それぞれ既習事項を良く生かしていることをほめて、教科書P76の答えを読ませます。

*生徒達は、弥生時代の冊封体制から、聖徳太子、大化の改新などの学習を通して、このことをずっと学んできました。古代の国づくりの各授業の中心に「皇帝と天皇」というテーマがありました。
 そういうふうにして、うすうすはわかっているという状態で、この古代史のまとめの授業を受けることになります。

「日本国は、君主が久しく世襲し、また臣下も親のあとを継いでいるという。これこそ理想である。
ところがわが国は乱が絶えず、王朝は短期間で交替し、大臣、名家で後を継げたものは少ない」

『みなさんの考えのほとんどが正解でしたね。
日本の天皇は、一つの血筋でずっと後を継がれてきました(万世一系でしたね)。親から子へ位が受け継がれていくことを「世襲」といいます。だから、わが国は建国以来ずっと天皇中心の国・日本のままです。
けれども、中国ではいつ滅ぼされるかわからない。
隋の王朝ができるとその皇帝は楊氏ですから、隋のあいだは世襲されていきますが、やがて滅ぼされて、こんどは唐の国ができます。唐の皇帝は李氏です。唐もやがて滅びて、こんどは元です。これはモンゴル民族の国ですから、中国は異民族に支配されてしまいます。宋はその元の次の皇帝(趙氏)ですから、ため息も深かったわけです。
ですから、ずっと一つの家系で続き、皇位が世襲されている日本の天皇が、よほどうらやましかったのですね』

このあと、教科書を読みながら、次のことを教えました。

・中国方式を易姓革命といい、武力の強いほうが勝って新しい国をつくってしまうやり方が、いわば世界標準であ り、日本は例外です。

・国づくりを隋と唐の文化に学んだ日本ですが、肝心なところは受け入れないで日本人の知恵を生かした。いちば ん重要なのは、易姓革命んぽ文化を否定して、皇室を守り続けたこと。

・日本の天皇は、国が完成したら、しだいに神々をまつる聖なる君主になり、現実の政治権力は家臣に渡してしま いました。そして、政治権力者を任命する立場になりました。

・実際の政治は、太政大臣、摂政、関白、院、征夷大将軍、内閣総理大臣が、天皇に任命されて担当しています。
 日本では、武力や政争で滅ぼされるのは、この実際の政治の権力者にすぎず、天皇の血筋は永遠に不滅です。

●最後に、こう聞きました。

『中国の「隋・唐・宋・元・明・清」と、日本の「平安・鎌倉・室町・江戸」は、似ていますがまったく意味が違います。そのちがいは何ですか?』

・中国は国が変わる。日本はずっと日本で、それは時代の名前です。

・中国は支配者が変わるが、天皇はずっと日本の中心で、平安や鎌倉は政治の中心がどこかを表している。

●このように、中国の場合は、王朝(国)の名前であり、日本は単なる時代区分であることをおさえ、次のように締めくくった。

『天皇中心の国という国のかたちが、わが国の世界に誇れるすばらしい伝統だということがわかります。この伝統を、中世、近世、近現代の歴史のなかでも確かめていきましょう』

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●この授業をやってみて、やはり「中国」という用語がまどろっこしいことがわかります。なぜなら、いかにもこれは国名のようだからです。
西洋諸国のように「シナ」を使うのがいちばんん理解しやすいと思いました。

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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

コメント

コメント一覧 (2件)

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    倉山塾では、サイトのご紹介ありがとうございました。
    遡って拝読させて頂きます。

    昔、学校で習った歴史の授業は、左翼の先生が日本の悪口を言い、「賢い」生徒たちが、そのお追従をする気味の悪い時間でした。
    ここにあるような授業を受けられる生徒たちは、本当に幸せだと思います。
    最近になって、ようやく歴史戦争の只中にあることを自覚し、後れ馳せながら、勉強を始めたところです。
    子供がまだ小学生なので、折に触れて歴史の話をするようにしたいと思っています。

  • SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    うっかりしていて、ごあいさつがおそくなりました。
    さっそく訪ねていただきありがとうございました。
    まだわが授業づくりは途上にあります。
    どうかお気づきのことなどご指摘いただければ幸いです。

    ご子息が6年生になりましたら、
    歴史の授業がどうなっているのかを、
    ぜひ点検してください。

    倉山塾のコメントもいつも拝読しています。
    今後ともどうぞよろしくお願いします。

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