日露戦争後の日本
「日露戦争が世界に与えた影響」の授業をしてから、
「日露戦争後の日本は、帝国主義列強の支配する世界でどう生きるべきか?」
と題して自分の考えを書かせ、発表する授業を3クラスでやった。
立場は次の選択肢で選ばせた。
A:アジア初の帝国主義国として、欧米列強と対等に発展していく。
B:アジアのリーダーとして、植民地独立運動を支援していく。
C:その他の生き方を選ぶ。
次のような意見が出た。
Aの立場(36人)
●欧米列強の一員となることで、同盟をたくさん結び、国を安全に保つことができると思う。それに工業なども更に発展させれば、国勢も安定し、良い国ができると思う。
●植民地の国を助けるためには、自国が強くならなければ意味が無いから。
●やっと列強と肩を並べられるのだから、自分たちも植民地を持ったり、新しい機械を使ったりして、発展しようと思う。
●植民地の独立運動を助けようとすると、せっかっく欧米と対等になったのに、また、元にもどされてしまうと思ったからです。また戦争を繰り返すのはいやなので、帝国主義の一員として発展していったほうがいい。
●植民地の独立運動を助けるために戦争をしたら、日本はおそらく負けてしまうから。
●明治維新の時のような気持ちの人が多くて、ザ・武士といえる西郷や勝がいたらBだったかもしれないけど、当時の日本は対等になれて調子に乗っていたから、Bのような考えは思いつかないと思う。また、清やロシアの大国に勝って調子に乗っていたから、もっと植民地を手に入れて、世界征服してやろうかと思っていてもおかしくなさそう。世界征服とはいかなくても、(列強に支配されている人々には)人の手を借りずに自分でやれ!!と思っていたはずだ。だって、日本はどこの手も借りなかった。侵略されかけていたのに。
●自分の国のことは、自分で考え、自分たちでやった方が良いと思うから。
●今のうちに欧米列強と仲良くしておけば、これからの戦争に有利になると思うから。
●せっかく欧米列強と並んだのだから、その地位を守る努力をしないと、いつ支配されるかわからないので、Aがいいと思う。
●有色人種の手助けをして、いっしょにやられて、奴隷状態に戻るかも知れないから。
●この調子で日本を更に発展させ、どの国と戦って勝てるような国にするためには、列強の一員となるべきだと思う。
●Bも世界のためにってことで良いことだと思うけど、まず、自分の国を1番に考えるとAになると思います。
●Bだと列強と戦争になると思ったから。
●Bを選んだら他のアジア人を助けなければいけない、そうしたら列強の一員からは
●何人も犠牲にしてまで戦争をして、勝って手に入れた地位だし、対等につきあうことは目標でもあったから、列強と一緒に発展していくのがいいと思う。
●白人に、有色人種でも頑張れば白人と対等になれるということをわからせたのだから、帝国主義の一員として発展していってもいいんじゃないかと思ったから。
●さらに発展していって、他の列強を出し抜きたい。
●どんどん発展していって、世界の頂点を取る。
●Aを選び、もう少し間をあけて相手をよく見る。
●日露戦争に勝って韓国などを植民地に取ったから、帝国主義の一員として発展していったと思う。
●これから発展していかないといけないから。
ずされてしまうかもしれない。植民地を支配する主義なのに、それを助けたらまた戦争が起きてしまうから。
●白人支配の世界を変えるために生きるとすると、白人国と戦争になってしまうと思ったから。
●日本も植民地をふやして、日本を豊かにする。
●もしBを選べば、欧米列強にバカにされる気がします。そして戦争になりかねないから、Aを選びました。Aを選べば列強とは戦争にならないと思いました。
Bの立場(48名)
●他のアジア人にスゴイと言われたと思うし、有色人種は有色人種どうしで協力してほしい。
●黒人がかわいそうだから助けたいと思う。
●日本は欧米列強と対等な立場になりたかっただけで、帝国主義列強の一員として発展していこうとは考えなかったと思う。それに、そう発展していくよりも、植民地の独立運動を助けて、有色人種の仲間を増やしていく方がいいと思ったから。
●他の国がまたいつ仕掛けてくるかもしれないから、白人の支配を変えるほうがいいと思ったから。
●世界の一等国にまでなったのだから、さらに力をつけて植民地支配されている国を助け、欧米列強から一目置かれるようになるべきだと考えたから。
●日々苦しめられている有色人種にも、やればできるということを伝えるから。
●白人の勢力が上がってしまえば、日本は不利になるから。
●いままでは、いわゆる仲間であった有色人種を助けたいという気持があるから。
●やっぱり、日本以外の有色人種仲間も、独立しようと頑張っているのだから、助けるべきであると思う。日本だって頑張ってやっと帝国主義列強の一員となったのだから、そこで発展したいのもわかるが、仲間を助けるのが最優先。対等な立場になるにはどうしたらいいかは、日本が一番わかっていおると思うし・・・。仲間を見捨てるわけにはいかない!!
●昔からの仲間だったから。
●日本に戦争されることがないと思うから。
●有色人種の仲間をふやしす。
●自分だけいい思いをするのはよくないし、他の国にも独立してほしいから。
●白人とまた戦争になると思うけど、同じアジア人や有色人種を助けたい。でも、ボロボロになるかもしれない。
●助けたいから。
●白人支配の世界を変えないと、いつか有色人種はみんな奴隷になってしまうかもしれないから。
●帝国主義列強の一員として生き続けながらも、同じ有色人種と助け合う考えです。理由は、日本最初の目標、欧米列強と対等になることで、今対等につきあう。また、同じ有色人種として、全面的に助けるのではなく、アドバイス的なものをすればいいと思いました。
●アジアの独立した国と同盟を組み、同じ社会をつくれば、ヨーロッパの人たちに勝てるかも知れないから。
●白人の人たちを救って、世界全体を平和にしたいから。
●アジアを独立させ、世界を平等にしたほうがいい。
●Aのほうが「国」としてはいいのかもしれないけど、「日本」としては古来から受けついできた武士道精神、日本人としての道徳心に反するから、Bを選ぶべきだと思う。
●日本が日露戦争に勝てたのは、もうお金がなくて困っていた日本にイギリスが援助してくれたおかげなので、日本も他の国の独立を助けていけば、世界が豊かになると思ったから。
●ヨーロッパと同じことをすれば、アジアの国を裏切ることになるから。さらにそうすることで白人の意識もかなり変わるのです。また、独特の文化を復興するためにはBしかない。
●白人に植民地にされたくないし、相手の思い通りにさせたくないからです。
●有色人種を支配するなんてよくないか、今すぐ支配をやめさせるためにBを選びました。やはり平等でなければならないから。
●有色人種としてのほこりを思い出すため。
●日本も助けてもらったことがあるから。自分も他の国を助ける立場になろうと思ったから。
●白人に支配されている他の国も助けてあげたいから。
●日本は列強と対等になったが、他の国はまだ植民地状態だから。
●独立運動を助けて、白人と対等につきあえる国に変える。
●他の国のような帝国主義の一国になるんじゃなくて、日本人は優しい性格なので、軍事力も保ちつつ、日本なりのやり方で白人支配の世界を変えていきたい。
●わざわざ日本に留学してくる若者たちの期待を裏切りたくないと思いました。白人支配の世界で、平等ではなく・・・。皆が平等で、対等につきあえる世界にしたいなと思いました。一歩でも平和な世界に近づきたいと思いました。
●Bのように植民地を発展させて資源を豊かにしたり、政治を行えるようにする。それで対等というより、ボスと手下のような、育てたような関係で貿易をすれば良いと思う。同盟を組んで助け合うこともできる。それで、アジア全体をそのような関係にして、白人と対等になる。Bに近い考えです。
●有色人種は有色人種どうしで助け合って、白人達の支配をなくしたいから。
●弱いものいじめはよくないから。
●欧米列強とは対等につきあえる国につくり上げたし、自分らと同じ思いをしていた国を助けたい。国同士の絆や恩は100年たっても忘れないことを齋藤先生の道徳(エルトゥールル号の話)で知ったから。
●やはり、私的には、自分の国だけゆうふくになるのは良くないと思う。努力して列強に追いつく勢力を持ったが、強い権力を持った国にやられてきたことを、日本が同じことをするのは心がせまいと思う。だから私はそんなことをせず、助けたいと思った。
Cの立場(13名)
●(軍事力をつけて大国を倒す)大国をつぶせば、他の国を味方につけ、貿易・外交を有利に進められるから。
●Aを選んだら有色人種に悪いけど、Bを選んだら戦争になってしまうから。
●Aを選んでいろんな国を植民地にして、日本はすごい!というところを見せつけても、日本は敵だ!という国が出てくるかもしれない。Bを選んで独立運動を助けて日本の力が衰えたら意味が無い。日本は、みんなに平等にするような独立国にしたいと思いました。
●他国と助け合う国になる。日露戦争で大きな被害を受けた日本が、列強の一員として世界中の国を侵略すると、争いになりかねないから。
●他の国を植民地にする国。いつまでも列強と対等につきあっていては、日本は変わらない。日本はどんどん弱くなっていくと思う。強くなるためには、日本の植民地を増やして、日本が強いということを列強に認めさせないといけないと思う。
●日本にはもう軍事費はない。帝国主義の一員として発展していくとすると、今までの「戦争を好まない国日本」とは真逆になってしまうから、たぶん帝国主義の一員にはならないと思う。アジアの独立運動を助けようとすると、欧米列強と大きな戦いになってしまう可能性があり、日本はつぶされてしまう。日本は日本だけをずっと守り続ける国になるべきだと思う。
●せっかくアジアの人々に独立への希望を与えたのだから、アジアの独立運動を助けるべきだと思う。
●日本が独立運動を助け、同盟と貿易を結んで力をつけ、負けた欧米人たちと同じ立場または仲間にして、そして、残りの植民地支配を助ける。崩れた戦力バランスを日本が補い、独立運動を助けることによって、貿易や同盟を結び、利益を手に入れられるから。白人達は利益が欲しいから、日本と他の国と貿易できれば、自分たちの利益にもなり、戦力強化につながるため。植民地が消えると収入(利益)が消えるから、怒るのであり、同じ利益がこちらにもあるので、同盟を結び、そうしてから(以下不明)
●帝国主義の方に入ったら、日本が今まで味わった苦しみを自分たちが与えてしまう可能性があるし、独立運動を助けたら、植民地化していた国が日本を攻めてくる可能性がある。日本は中立の立場に立ち、日本を必ず守るようにしていく。
●BとAをあわせる。他のアジアの植民地と帝国主義の国々とでは、実力差があるので、かんたんには独立できない。帝国主義国として発展しつつ、他の帝国主義国に植民地の解放をよびかけていけば、戦争はしなくても他の国が独立できるのかなと思いました。
●戦争のない友好な国づきあいで、平和な世界にしたいと思います。そして、支配のない国。
●全部対等にする。
●最初はAにして、その次にBをするようにする。まず有色人種の国を取り返して、ある程度まで発展させる。その次に、仲間にした有色人種の国と共に、白人国を倒す。
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私は泥沼にはまって這い出せないでいますが、あまりリアリティがなく、思い違いも多いとはいえ、これらの考えは私の授業の現段階です。
大正から昭和への日本の選択肢は、広い意味で帝国主義かアジア主義かという両極の間にあったのだと思います。
そして、共産主義は広い意味でアジア主義的な感受性に依拠していたのだと思います。
次は、韓国併合と辛亥革命をやります。
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