天平文化のかがやき
●古代日本の完成を象徴する傑出した芸術群をたたえる授業です。
1 鑑真
この像を見て、鑑真という人物がどんな人だったのか想像して、ノートに書きなさい。
*発表させる。
*資料集で、鑑真について調べ発表させる。
*厳しい試練と運命を乗り越えてきた強い意志の持ち主を、穏やかで高貴な姿と盲目の微笑で表現している作者の高い力量を感じ取らせる。
『鑑真は、聖武天皇や光明皇后など多くの人々に仏教の心や決まりを教えました。朝廷はこの高僧のために唐招提寺というお寺を建てました。この像はいまもこの寺にあり、6月6日の前後数日間だけ公開されます。鑑真が日本で過ごした日々は66歳から75歳までの9年間でした。663年、この像の姿のまま祈るようになくなったと伝えられています』
2 天平の仏たち
*鑑真が世界の肖像彫刻の中でも白眉であることを教える。
『奈良時代は文明国としての日本が完成した時代だと、前の時間に勉強しました。今日は、もうひとつの文明国の条件として、奈良時代の芸術について学びましょう。その国の芸術作品はまさにその国の精神のレベルを表すものだからです。奈良時代は、いまも私たち日本人が世界に誇れるたいへん優れたたくさんの芸術を生み出した時代なのです。鑑真像は実在した人物の肖像彫刻として世界に誇れるものですが、この時代はほかにもたくさんの仏像がつくられました。みなさんにその素晴らしさを感じ取ってほしいのです』
*天平美術の至宝(すべて国宝)の写真を掲示し鑑賞させる。
①八部衆立像「阿修羅」(興福寺) 脱活乾漆像
⑤十二神将像「伐折羅(ばさら)」「迷企羅(めきら)」(新薬師寺) 塑像
これらの国宝はいまも信仰の対象になっている仏像ですが、いずれも世界のどこに出しても一級の芸術作品です。気に入った仏像を見た感想を発表してください。
*発表させ、世界一級の芸術作品を生み出した奈良時代の達成に共感させる。
3 万葉集
●*板書して説明する。
・『万葉集』全20巻
・8世紀後半に完成した日本最古の詩集
この詩集は、世界に誇れる驚くべき特徴があります。それはどんなことでしょうか?
・天皇や貴族から庶民まで、約4500首の歌(詩)がおさめられている。
→これは「芸術の前での平等」という日本の万葉集だけのすばらしい特徴である。
*すべて漢字で書いてある。・・・・万葉仮名
*プリント資料を配り、以下の4つの歌を音読させる。
①舒明天皇
②持統天皇
③柿本人麻呂
④防人の歌
【プリント資料】天平文化のかがやき①
■奈良東大寺の大仏・・・・世界一巨大なブロンズ像
■すばらしい仏像たち
①「鑑真和上像(がんじんわじょうぞう)」(唐招提寺)
②八部衆立像「阿修羅(あしゅら」(興福寺)
③十大弟子像「富楼那(ふるな)」(興福寺)
④「日光・月光菩薩(にっこうがっこうぼさつ」(東大寺)
⑤四天王像「広目天(こうもくてん)」(東大寺)
⑥十二神将像「伐折羅(ばさら)」「迷企羅(めきら)」(新薬師寺)
★①~④は乾漆像(かんしつぞう) ・土でおおまかな形をつくる。・麻布をうるしでかためて形を作る。
・中の土をぬく。・木の粉とうるしで表面をととのえる。
★⑤⑥は塑像(そぞう)・全体を粘土でつくった像
天平文化のかがやき②
■万葉集(まんようしゅう)
*八世紀の後半にできた、日本最古の詩集(全二〇巻)
*男性、女性、身分の区別なくすぐれた作品(短歌など)が約四五〇〇首
*日本語の歌を工夫して漢字で表した・・・万葉仮名(まんようがな)
《舒明天皇》
【原文の表現】山常庭 村山有度 取与呂布 天乃香具山 騰立 国見乎為者
国原波 煙立龍 海原波 加万目立多津 怜怜国曾 八間跡能国者
【いまの読み方に直すと】
大和には 群山あれど
とりよろう 天の香具山
登り立ち 国見をすれば
国原は 煙立ち立つ
海原は かもめ立ち立つ
うまし国ぞ 大和の国は
【歌の意味】大和には山々がたくさんあるが、すばらしいのは天の香具山だ。
そこに登って国を見晴らすと、
家々のかまどの煙が立ち上り、海にはかもめが飛んでいる。
すばらしい国だなあ、大和の国は。
《持統天皇》 春すぎて夏来るらし白たえの 衣ほしたり天の香具山
《柿本人麻呂》 東の野にかぎろひの立つ見えて かへり見ずれば月かたぶきぬ
《防人の歌》 今日よりはかへりみなくて大君の しこのみ盾と 出で立つ我は
4 まとめ
『文明国家として完成した日本は、文化・芸術の面でも世界に誇れる作品をたくさん創り出したのです。』
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