弥生時代1「変化の時代が始まる」



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弥生時代1「縄文が終わりと巨大な変化が始まる」

●1万数千年の縄文時代を終わらせたものは何かをとらえる。その変化は、大陸から渡って来た人々がもたらした新しい技術や物が原因だった。最も重要なポイントは大規模な農業(水田稲作)の始まりとその定着である。これはまさに日本列島の農業革命である。その様相をとらえ、この農業革命の上に国家形成が始まり、その後の大変化の時代も始まったことをとらえる。最後に、先祖(縄文人)になってみて、「この変化を受け入れるべきか否か」を考えてみる。これが、最初の政策選択発問である。

1 縄文時代が終わり弥生時代が始まった
『1万年以上続いた縄文時代が終わったのはいまから2300年ほど前のことでした。それまでの1万数千年を縄文時代といい、その後の600年間ほどを弥生時代といいます』

2 弥生時代の特徴
●縄文器と弥生土器

弥生土器

縄文土器の技術が受け継がれて、新しい土器が作られるようになります。
 縄文土器と比べてみて、弥生土器の特徴を言いなさい。

「すっきりしている」
「きれいな形」
「あんまり飾りや模様がない」など。
とてもシンプルなデザインが特徴であることを確認します。そして、ろくろの技術によってほぼ完ぺきな円形になっていること、高温で焼く技術によって、縄文土器よりもはるかに薄くて軽くて、しかも固い製品になっていることを教えます。また、明治時代に東京弥生町で発見されたことから、この時代以後の土器を弥生土器とよび、弥生土器がつくられた時代を弥生時代ということも。

�絵「米作りの四季」

米作りの四季

縄文時代との一番大きなちがいをいいなさい。

「稲作」「米作り」
大規模な農業が始まったことをおさえます。これを農業革命といいます。これが弥生時代の変化のいちばんのポイントです。
『弥生土器のシンプルなデザインは、深い森の中の生活から平地に出てきて、大規模な土木工事をやって水を引いて水田を作り、食べるものを計画的に作るようになったこと。自然の一部だった生活から、自然をコントロールできる生活が始まったことと関係があるかも知れません』

水田稲作を始めることによって、ご先祖の社会は大きく変わりました。
 その特徴を教えます。

川から水を引く水路をつくる土木工事、、大量の矢板をつくり田を作る工事、種まき、草取り、水の管理、稲穂刈り、収穫物の管理、収穫物の分配、という1年がかりのプランのもとに大勢の人々が動く、一つの目標のもとに仕事を分担して動く、大勢の人の力が必要になったこと。それは、この組織だった社会をまとめる知恵と技術を持ったリーダー、グループリーダーなども必要になる。これは国や王の始まりだ。また役割のちがいは身分制度の始まりにもなる。
この変化も後の時代につながっていく大きな変化だ。

�想像図「弥生時代の大きな集落」

想像図「環濠集落」

この絵も、弥生時代の新しい変化を教えています。

なぜ、ムラを堀や柵で囲むようになったのでしょう?

「他の村から攻められたときにムラを守る」
「戦いに備えている」
「戦争をするようになった」など。

環濠集落はムラ同士が戦うようになったことを示している。日本列島における戦争の始まりは、米作りと共にやってきた中国の文化であった。水の争い、収穫物(米)の奪い合い、より大きい集団になろうとする争い、など。
ここで、ビデオ「NHK:日本人はどこから来たか」(一部)から、大阪から出土したたくさんの矢じりを身体に受けた人骨、サヌカイトの矢じりの威力を実験した映像や、CGによる弥生の戦争のイメージ、の部分を見せる。

15本の鏃が刺さった人骨

�写真「銅鐸・銅矛・銅鏡・鉄製の農具」

これらの道具も、弥生時代の新しい変化の代表です。これらは人類第2の偉大な発明品といってもいいでしょう。ところで、これらの道具の原料は何ですか?

「銅」「鉄」など。
『その通りです。これらをまとめていうと?』
「金属」
『金属で作られた道具を金属器といいます。岩石に含まれる銅や鉄は、ものすごい高温で溶かして取り出します。それは高度な技術で、これも中国から伝えられたと考えられています』
金属器の3つの使用目的を教えよう。
�祭具、�武器、�農具
ここでは、とくに祭具としての銅鐸や銅鏡について補足し、縄文時代の神話や祭祀の上に、弥生時代の新しい神話や祭祀が生まれてきて、日本のいまにつながる神々が誕生してくると考えられることを教えておこう。
歴史の中で、神々に祈り続けていた先祖の姿をしっかりイメージさせることはたいへん重要である。それは、現在にあっても、天皇陛下の最も重要なご公務である「祭祀」が、遠い先祖からの継承であることを教えることになるからである。

3 海の向こうから来た新しい文化

弥生時代の3つの特徴はすべて、中国大陸から渡ってきた。
�水田稲作(農業革命)
�戦争、クニ(国)
�金属器
海の向こうから来た新しい文化が、縄文時代を終わらせた。

こんなまとめをします。
米と金属を作る技術は海の向こうからやってきました。なぜか。それは水田稲作も青銅器も鉄器も中国文明が先に始めたからであり、戦乱に終われるなど、さまざまな理由から、日本列島に逃げてきた人々が伝えたかである。文字も、政治も、戦争も、国家も、さまざまな道具や観念やシステムが、このときに一緒に日本にもたらされました。
 それらが海を渡って伝わってきた。技術や考え方を持った人々が一緒に来たからです。稲だけが流れるいても一年かけて作る米作りの技術はわかりません。
 これらの見たこともないパワーを秘めた物や技術に、縄文のムラの人々はものすごく驚いたことでしょう。そうとうなショックを受けたはずです。
 彼らとの戦いがあり、交流があり、縄文人はこれらを受け入れました。金属器のようにすぐ受け入れるほかなかったものもあれば、漢字(中国語)のように長い時間をかけて受け入れたものもあります。しかし、いずれにせよ、こうして縄文時代は終わったのです。
 
4 守るべきか、変わるべきか?
最後に、問うておこう。
これはわが国の歴史を考えるときの原点になる問題である。

タイムマシンに乗って2300年前に行きましょう。
みなさんは1万年続いてきた縄文の文化をご先祖様から受け継いできた縄文人です。
いま、海の向こうから新しい米作りや金属の道具が伝わってきました。これを取り入れると、今日勉強したように、大きな変化が起こります。
・今までの自然とともに暮らす生活、
・ムラ同士が助け合って生きる生活、
・ムラにはリーダーがいたでしょうが、ほとんど身分の差もなく、みんなが家族のように くらした生活。
それが終わってしまいます。

あなたはどうしますか、AかBを選んで、その理由をメモしましょう。  
〈A〉新しい文化を受け入れ、より進歩することを選ぶ。
〈B〉新しい文化は受け入れない。今までの暮らしを守る。

挙手で意見分布(Aが○人、Bが□人)をたしかめ(板書します)、理由を言わせます。
これは伝統を保守するか、革新するかという、わが国の伝統的なテーマの原型になります。
縄文時代の学習と今日の学習の受容の仕方(肯定的・否定的のバランスです)が、学習者それぞれでちがうことがわかります。
けっこう半分半分くらいになるからおもしろいです。保守派と進歩派ですね。理由はさまざまです。

こんなうにまとめて授業を終わります。
『皆さんの先祖は、結局、稲作と金属器による発展を求めた。
新しい魅力があったのかもしれない。米はドングリよりうまい!とか、ピカピカする金属は自然界にないからすごいというようにね。
また、戦うならこれを使うしかないなみたいに、仕方なく受け入れた面もあったかもしれない。まあ、実際は分からない。
そうして16000年続いた縄文時代が終わって、わずか2300年くらいで、ビルが建ち並び、高速列車が走り、飛行機が飛び、宇宙にも行く今になった。
 もし、縄文文化を守り続けていたら今も自然に優しい生活と文化が続いていたかもしれない。たとえばちょっと前の太平洋の南の島々のように、つい最近まで縄文時代みたいだった国もある。
 しかし、そんなことしてたら、どこかの国に征服されて、日本も日本人もなくなっていたかもしれない。
 海のむこうからやってくるものと日本は無関係ではいられない。
 大陸からちょうどいい具合の距離に日本列島はあるからです。
 これが私たち先祖の運命だった(太平洋のど真ん中にあったら〈B〉もありえたでしょうね)。
 いろいろな理由があり、きっとたくさん悩んだり迷ったりしながら、最後に、私たちの先祖は変化することを選んだ。それが歴史の事実です。
 こうして気の遠くなるような長い時間だった縄文時代が終わりました。
 弥生時代は、今につながる大きな変化の時代の始まりです』



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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

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